「米国大使との極秘会談」の裏に潜む
小沢一郎の「鳩山切り」

菅直人も財務省と組んでやる気マンマン

 米軍の普天間飛行場移設問題の合意期限である5月末が迫っている。加えて東京地検特捜部が小沢一郎民主党幹事長に対する再聴取に動き、政局はなにが起きてもおかしくない緊迫した展開になってきた。

 そんな中で今週初め、注目すべきニュースがあった。米国のルース駐日大使が小沢と極秘に会談し「鳩山は信用できない。岡田克也外相じゃ話がまとまらない。北沢俊美防衛相じゃ話にならない」と語ったというのだ(5月10日付け、毎日新聞朝刊)。

 記事によれば、小沢が盛岡市内で会食した関係者にそんな話をしたという。記事を書いた毎日記者はその「関係者」から話を聞いたということだろうか。経緯は不明だが、小沢サイドから表に出た話であるのは、まず間違いなさそうだ。

 小沢は同じ10日夕方の会見で「政治向きの話はしていない。おいしいワインをごちそうになっただけ」と会談したこと自体は認めている。

 記事が正しければ、少なくとも普天間問題に関するかぎり(そんな限定はいらないと思うが)、米国は鳩山政権をすでに見限っていることになる。そしてもっと重要なのは、小沢自身もどうやら鳩山政権を見限っているという点である。

 なぜなら、いくら相手が自分の支持者であったとしても、こんなルースの話を外に漏らぜば、鳩山政権に打撃になるくらいはだれでも分かる。百歩譲ったとしても、鳩山を軽く扱っている。小沢が本気で鳩山を守るつもりなら、間違っても会談内容を口外したりしないはずであるからだ。

 小沢が「ワインをごちそうになっただけ」と否定するのは当然だ。記事全体を認めれば、小沢も「鳩山を見限った」と公言したも同然になってしまう。

 米国が政権の命運を左右する極めて重要な要素であるのは、言うまでもない。そういえば『文藝春秋』6月号にも「爾後、鳩山政権ヲ対手トセズ」という記事が出た。普天間問題での「オバマの決断」であるそうだ。

 さしあたり、小沢の口から極秘会談が明らかになったというだけでも十分だろう。それほど重要な米国の本音を外に漏らしたという話が本当なら、それで小沢の鳩山に対する姿勢がうかがえる。

 小沢は鳩山を切るのに「米国ファクター」を使おうとしているようだ。

 鳩山政権の賞味期限が切れかかっているのは、いまやだれにも分かる。鳩山が辞めるとすれば、どういう形になるのか。そこがはっきりしない。政権は外からの攻撃では倒れない。内側から反乱に遭うときに倒れる、という一般原則にしたがって考えてみる。

 鳩山が小沢の傀儡であるとして、反小沢グループの筆頭格である岡田や前原誠司国土交通相、仙谷由人国家戦略相ら「七人衆」は鳩山降ろしに動くのか。

 この3人はよくポスト鳩山候補に挙げられるが、岡田と前原は「政治的資格」がない。外相の岡田はもちろん、沖縄・北方担当の内閣府特命相を兼務している前原も普天間問題の責任者の1人だからだ。鳩山の後を継ぐのに「自分は普天間に関係がなかった」とはいえない。仙谷も鳩山内閣の重要閣僚という点で同じである。

 七人衆は小沢に批判的スタンスだが、本気で鳩山降ろしに動きそうな気配がないのは、そういう事情があるからだろう。

 小沢が鳩山を切るなら、話は別である。その場合、反鳩山に動き始めた米国は使える。小沢はそんな思惑を秘めているかもしれない。

 米国がどういう形でニュースに出てくるか。米国自身ではなくとも、小沢やその周辺が情報の発信元になっていそうな場合は、これから要注意である。

渡部恒三の予言

 菅直人副総理兼財務相の動きにも目が離せない。

 これまで何度も指摘してきたが、菅はこのところ消費税引き上げを含む財政再建にたいへんな熱意を示している。11日には、2011年度予算編成の国債発行額を10年度の44.3兆円以下に抑える考えを表明した。

 来年度の概算要求基準(シーリング)をどうするかでさえ決まっていないのに、いまから国債発行額の上限に言及するのは異例だ。普通なら、ことし秋に議論する話である。それだけ財政の現状が厳しいとは言える。だが、これも額面通りには受け取れない。

 財務省は表向き「44.3兆円に抑制するのですら難しい」と困惑している様子を示しているが、なにも言わないよりはましだ。もちろん歓迎している。むしろ「よし、これで菅を総理にしてしまおう」と考えるだろう。総理にしてしまえば「あのとき上限額を口にしましたよね」と言えるからだ。

 菅は財務省を味方につける意思をますますはっきりさせてきた。

 鳩山はといえば「財政規律を守りたい財務相の気持ちは分からなくないが、けっして私の考えではない」と語った。つまり「財務省路線には乗らない」と言っている。

 以上をまとめると、米国と財務省、それに政権内側のど真ん中にいる小沢一郎。この3者がいずれも鳩山おろしに動き、ポスト鳩山の鍵を握っている。次は「おそらく菅」と名指しした渡部恒三元民主党最高顧問の予言が当たるのではないか。

(文中敬称略)

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