お金を払って満員電車に乗っている

日本の労働生産性の低さが問題視されている。OECD加盟35ヵ国中20位(「労働生産性の国際比較2016年版」公益財団法人 日本生産性本部より)。ただでさえ生産性が低いにもかかわらず、そこに満員電車の通勤なるタダ働きがアドオンされる。

タダ働きどころではない。非人間的な満員空間に閉じこめられ、朝から体力と気力と尊厳を奪われる。社員は職場に到着した時点でヘトヘト。生産性があがる訳が無い。

せめて帰りはゆったり座ってプライベートタイムを充実させよう。そう思っても……帰りの電車も満員!

近年、東京都心部の鉄道各社は「直通サービス」の名の下に無慈悲な直通運転を繰り広げている。会社帰りのターミナル駅、待てど暮らせど来るのは非始発の混雑列車ばかり。行きも帰りも、貴重な時間と体力をドブに捨て続ける。これはたまったものではない。

お金(運賃)を払って苦しい思いをし、人生の貴重な時間を無駄にする。こんな理不尽はない。

さらに、連日どこかで発生している鉄道トラブル。これが通勤者のストレスを倍増させる。このデータを見て欲しい。国土交通省が取りまとめた、東京圏の鉄道各線の輸送障害件数の推移である。

国土交通省 遅延対策ワーキング・グループ 最終取りまとめ 2016年4月20日より
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右肩上がり。言わずもがな満員電車で苦しんでいる間、トラブルで足止め食らっている時間。なんのアウトプットも生まない。すなわち、会社も個人も得しないのだ。

誰も得しない悪しき慣習。鉄道会社も、改善努力をしない(しているのかもしれないが、状況は良くならない)。鉄道がワークとライフ、両面のボトルネックになる働き方、いったいいつまで日本人は続けるのだろうか?

殺人的なラッシュに毎日耐えろ!

いやいや、あの混雑は体力的にも精神的にも無理な人もいる。世の中、体育会系の人ばかりではない。都市部で働くすべての人に、付加価値をまったく生まない通勤行為に、体育会系の気合・根性・忍耐を強要するのは、昭和時代の悪しき体育会系のノリであり罪である。それこそダイバーシティ(多様性尊重)の本義に反する。

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なぜリモートワークを導入しないのか

「長時間の通勤は、日本人の宿命」

「日本のサラリーマンは、通勤ラッシュに耐えて当たり前」

この、誰も得しない常識。そろそろアップデートしよう。乗車価値の低い鉄道サービスに、いつまでもお金を払い続ける義理はない。だったらITネットワークに投資をして、リモートワークなど満員電車に翻弄されない働き方を実現したほうがポジティブだ。

リモートワークを基本とする会社もある。株式会社ソニックガーデン。Webアプリケーションの受託開発などを生業とする同社は、「オフィスなし、全員リモートワーク」を掲げ実践している。富山、愛知など全国各地の社員がITツールを駆使してコラボレーション。必要に応じて集まれるよう、オフィスも設けている。リモートが基本、オフィスはオプション。このような発想の転換こそが改革だ。

そうは言っても、完全リモートワークはハードルが高いかもしれない。リモートワークが難しい職種もあるだろう。

耳で聴く本、オーディオブック配信サービスを展開する株式会社オトバンクは「満員電車禁止令」を実施。社員が自己判断で、快適かつ最適な時間に通勤するよう奨励している。

満員電車の通勤にはさまざまなリスクが存在する。大切な社員を危険な目に遭わせたくない。生産性もあがらない。そう考えた社長が経営会議に提案。賛同を得て実施に至った。このように、満員電車のストレスやリスクを軽減する取り組みをおこなっている企業もある。

通勤行為は、それ以外にもムダな労力を発生させている。

毎朝「わざわざ」きちんと身支度して、駅まで行って、混んだ電車に乗って、駅からオフィスまで歩いて…。

これが週5日あるのと、まったく無いのとでは(あるいは週2日〜3日程度で済むのとでは)大きな違いだ。通勤頻度を減らせば、それだけ鉄道トラブルによる影響も小さくなる。業務を止めるリスクも低減でき、プライベートの時間も増える。

子どもの保育園のお迎え時間に間に合わないストレスも軽減される。週数日程度の出勤なら、グリーン車や有料ライナーなど乗車価値の高い手段を使っても財布もそれほど痛まない。なんなら、クルマで通勤しても良い。ワークもライフも幸せになる。