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35歳の「高齢処女」が歩んだ、喪失までの道のり

理想と現実の狭間で苦しみ続けて

国立社会保障・人口問題研究所の発表によると、独身女性の約60%が交際相手がおらず、さらにそのうち約40%は、性経験がないという。

2016年の人気ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』でも、アラフィフ処女を石田ゆり子が演じるなど、最近になって改めて注目を集めている「高齢処女」。

仕事に明け暮れ、交際相手もなく、やみくもに時間は過ぎ、はたと気が付けば30代半ば。周りはバタバタと結婚していく中で、いまさら男性と付き合ったとしても、「実は、初めてで…」なんて言い出せない。

現在、都内の病院に勤務する35歳の看護師の女性は、まさについこの間までそんな「高齢処女」の一人だった。現代ニッポンの水面下で何が起こっているのか。悩める女性の知られざる実態を追った。

 

どうして「王子様」は来ないの?

「半年前に、処女を喪失したんです。もう、そのときは嬉しくて、泣いちゃって…すぐに地元の一番の親友の看護師の同級生に電話で報告したんです。『あたし、女になった!って』友達は、『まさか、麻衣ちゃんが!』って驚いて、一緒に泣いてくれました」

待ち合わせ場所である池袋のタイ料理店に着くなり、中島麻衣さん(仮名・35歳、独身)は、半年前の処女喪失の体験を話し始めた。

麻衣さんは、都内の総合病院に正規職員として勤務している。たれ目が魅力的な「清楚系」で、笑顔がとても可愛らしく、看護師という職業がよく似合う穏やかな雰囲気を漂わせている。

「とろみ系」と言われるふわりとした今年流行りの白のシフォンに、水色の水玉模様のブラウス。そこから覗く二の腕は、筆者も羨ましいほどに、透き通るほどに白くて細い。

ジーンズのワイドパンツはスレンダーな体形の麻衣さんにピッタリだった。腰まであるサラサラのストレートロングヘアが、風でフワフワとなびくと、ハート形の深紅のピアスが揺れる。

そう、麻衣さんは、どこからどう見ても、おしゃれにも気を遣う今どきの女性。「女子力」は決して低くない。

そんな麻衣さんが、なぜ30代半ばにして処女喪失に至ったのか――。注文した生春巻きとパッタイが届いたところで、麻衣さんはその道のりを語り始めた。

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高校時代までの麻衣さんは、少女マンガが大好きな夢見がちな少女だった。バイブルは『天は赤い河のほとり』。古代ロマンの超大作で、あらゆるタイプのイケメンが総登場する人気マンガだ。

「あのマンガの登場人物のような、白馬の王子様みたいなイケメンが、いつか私の周りにも次々と現れると思っていました。あの頃はまだ恋愛が美しいものだと勝手に思ってたし、いつかどこかでいい人と出会えると思ってたけど、それが、いつまでたっても現れなかったんですよね」

麻衣さんは、そうつぶやくと、うつむいた。

現実はというと、麻衣さんによれば、看護師には暗黙の「恋愛ヒエラルキー」が存在するのだという。

抜群にルックスや器量の良い看護師は、早々に独身の医師を捕まえて、結婚という黄金ルートを辿る。合コンなどで知り合った警察官や、教師、公務員といった、いわゆる「安定職」の男性と結婚するルートもあった。

しかし、麻衣さんも何度か合コンに参加したものの、根っからの人見知りもあってスルーされ続けた。

なぜ、私の前には、白馬の王子様が現れないんだろう。ずっとそう思っていた。

そんな麻衣さんを見かねた職場の医師が、「うちの弟はどう?」と、紹介してくれたことがあった。その男性は20代の地方公務員だったが、実際に会ってみると、垢抜けない印象を受けた。何よりも、女性を目の前にすると、緊張のあまりなかなか目を合わせてしゃべれない様子だった。

麻衣さんはどうしても、彼の後頭部の薄毛に目がいってしまった。

「ちゃんと働いている人だったけれど、モジモジした態度とか、容姿とか、全てにおいて『タイプじゃない』と思って、お断りしちゃいました。私には、もっとイケメンが現れるはずだって。『なんでこんな人を紹介するんだろう?』とさえ思いました。本当に今考えると、自分でも何様?って感じですけど」

20代の頃は、まだ同僚と遊ぶのも楽しかった。仕事も順調で、週末は銀座のクラブに踊りに行き、年に2回は海外旅行で散財した。

しかし、そんな同僚も着々と彼氏を見つけて、バタバタと30歳を目前に結婚していった。麻衣さんは、自分だけ取り残されていく感じがした。

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