メディア・マスコミ

崖っぷちの広告業界、変革の鍵は「メディアのベンチャーキャピタル」化

~とあるクリエイターの10年を辿る
三浦 崇宏 プロフィール

もう少し、広告代理店のビジネスモデルを組織から紐解いていこう。

広告代理店には大きく分けて四つの部門がある。

メディア、営業、スタッフ(これは博報堂の言い方で、電通では内勤と呼ぶ)、そして本社系。

メディア部門は、テレビ局などのメディアと向き合い、彼らが持っている「広告枠」を預かり、クライアントの情報つまりCMなどの広告を配信するべく差配する部門である。必然的に社内には、テレビの各局担当や、新聞の各紙担当、WEBメディアの担当など、各主力メディア毎に担当する部署が存在することになる。すなわち彼らは担当するメディアの利益を代理する人間たちということになる。

営業部門は、クライアントと向き合い、彼らの要望に応えてCM制作・配信するために社内のメディア部門やスタッフ部門とやりとりをする。ここでは当然、各大手企業毎に担当するチームが存在することになる。サントリーチーム、ソフトバンクチームなどなど……彼らはクライアントである企業の利益を代理する人間たちだ。

そして、スタッフ(内勤)部門は、営業がクライアントから依頼された課題を解決するためには、どんなCMがいいのか、どんなプロジェクトにするべきかを企画し、検討する部門だ。

ここはクライアント毎に、というよりはクリエイティブ、マーケティング、PR、デジタルなど専門職能毎に細分化される。

このスタッフ部門でリーダーとして各種の専門職を取りまとめ、広告企画・制作の責任者として機能する人間を「クリエイティブディレクター」という。

通常の業務の流れはこうだ。まずクライアントが課題を提示して、営業に発注する。営業はその課題を解決するために、スタッフ部門の中から、最適なクリエイティブディレクターに相談し、スタッフィングをする。「今回はインパクトのあるCMを作る人がいい」とか、「WEBを中心に緻密で複雑なコミュニケーション設計ができる人がいい」とか。それぞれ適性があるのだ。

そしてクリエイティブディレクターが各セクションのスタッフを集めて、企画を設計。そこで初めて、その企画を世に打ち出すための枠を、メディア部門と選定する。営業がクライアントに企画を提案する裏で、メディア部門が媒体社と熾烈に話し合い、飲み比べ、怒鳴りあい、競合の広告代理店と奪い合いながら、有効な枠を抑えてくる。こうして広告は世の中に発信されていく。

 

2:広告代理店は不動産業です

広告代理店の収益のほとんどは、メディア部門の働きから生まれる。テレビや新聞、WEBメディアなど、多くの生活者が接するメディアの広告枠を代理販売した差額である。

例えば、一般的に「テレビでCMをよく見るよ」という感じまで放送するには、大体の目安でニ億円くらいかかる。クライアントからテレビ局に二億円支払ってもらい、広告代理店はその取引の15%くらいを手数料として獲得することになる。言い換えれば、どこまでいっても差額を得るだけの商売で、リスクも少ないぶん、利益率も低い労働集約型のビジネスだ。地主の土地を預かり、求めているお客様に販売し、収益を得ている不動産業と同じだ。

この構造を理解して以来、ぼくはOB訪問にくる就活生に必ず、「広告代理店ビジネスは本質的には不動産屋だってことはわかる?」と聞くようにしていた。当時は、このビジネスの本質を早めに理解して欲しいという先輩としての身勝手な優しさだったのだが、今思えば嫌な奴だったと思う。恋愛に憧れている少女に保健体育の話をしてどうするというのだ。

では、このメディアという土地を扱う不動産業はこれからも安泰で、地価は値上がりを続けていくのだろうか。当然だけど、そんなことはない。

新メディア「現代新書」OPEN!