ライフ

震災で認知症が進行した祖母と家族の「失われない確かなもの」

『わたしのお婆ちゃん』を知っていますか
現代ビジネス編集部 プロフィール

帰省気分から始まった介護生活

実家に帰ったときは、次の東京での引っ越しのために断捨離して、捨てられない荷物を実家に送って、生活環境を一度整えようかな~ぐらいの。そして「長めの休みを実家で過ごそう」ぐらいの、要は自分本位の軽い気持ちで帰省しました。まさか祖母があんな状態になってて、母があそこまで追い詰められているとは思ってなかった。

マンガでは、ニコはそこで初めて「婆が認知症だ」と聞かされることになっていますが、実際は震災直後にもせん妄状態になったり、ボケの兆候がなかったわけではありません。でも、先ほども書いたように、そんなに大きな問題だとは思ってなかった。というより、思いたくなかった。「認知症が社会問題になっている」というニュースは薄々聞こえてましたが、まさかうちの婆はそこまでじゃないだろうって。

東京と宮城で離れていると、認知症がどれだけ進行しているのか、皮膚感覚として本当に分かりにくいんです。たとえば祖母と電話で話してて、やけに同じ話の繰り返しが多いとしますよね。「あんた元気なの? たまには帰ってきなさいよ」なんて同じ話を、一度の電話で何度も繰り返しても、それって田舎のお婆ちゃんにとってはよくある話ですから。

 

だから久しぶりに帰省して、認知症がかなり進んだ祖母の姿を目の当たりにしたときは、「信じたくない……」って意識が先に立ってしまったんだと思います。今ならすぐ専門医に見せたほうがいいと分かる奇行も、当時はそれが認知症のせいだとは分からなかった。母も私も「なんで?」「どうしてそんなことするの!?」と戸惑うばかりで……。とにかく、ひたすら振り回されていました。

でも、自分の家族が急に「薬を塗ってるんだ」と言って、食事用の粗塩をお尻に擦り込んだりトイレの便器に脱いだ服を突っ込んだりしたら、最初はやっぱり驚きますよね(笑)。「何してんの!?」って突っ込まずにはいられない。

私も最初は「いやいや、婆ってばボケすぎでしょ~(笑)」って、楽観視することで現実から逃げてたんだろうと思います。「これはアルツハイマーからくる認知症で、この先悪くなることはあっても、もとに戻ることはない」なんて……。私も母も祖母がそんなことになるなんて考えたくないし、信じられなかったんですね。

新メディア「現代新書」OPEN!