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韓国と北朝鮮の急接近が招く「在韓米軍撤退」という悪夢

真に警戒すべきはこっちだ
長谷川 幸洋 プロフィール

日本にとっては大問題だ

たしかに、トランプ氏は「米国第一」を掲げた大統領選で海外の米軍基地負担の大きさに不満を述べていた。だが、基地負担を減らすために、駐留米軍の規模縮小はあっても、基地を丸ごと撤収してしまうのは考えにくい。中国への戦略的敗北に等しいからだ。

そうだとすると、トランプ氏の「南北統一を歓迎する」というスタンスも疑ってみる必要がある。南北統一が在韓米軍の撤退を招くのであれば「対中・ロシアけん制のために基地は必要」という米国の利害と衝突するからだ。

ずばり言えば、仮に北朝鮮の非核化が実現したとしても、在韓米軍を維持するためには、南北の緊張が多少、残っているほうが米国には都合がいいのである。

 

一方、韓国はどうか。「平和協定が結ばれれば、在韓米軍の存在理由がなくなる」のは論理的にその通りだったとしても、先に述べたように、北を信用するのはオメデタすぎるのに加えて、韓国も中国、ロシアとの関係を考えざるをえない。

韓国が未来永劫、中国とロシアの影響下で生きていくつもりなら、在韓米軍は必要ないだろう。だが、25日公開コラムで書いたように、米国との関係も維持する「ゴマすり国家」として生きていくなら、在韓米軍は捨てられない。

文氏もそんな韓国の宿命を肌で理解しているからこそ、大慌てで在韓米軍の存在を擁護したのだ。「米軍がいなくなったら、オレたちは中国とロシアの言いなりになってしまう」と青ざめたのである。

最後に日本だ。

日本は当然、在韓米軍に存在し続けてもらわなくてはならない。いなくなったら、韓国の保守派は頼る相手がいなくなり、やがて朝鮮半島全体が赤くなる可能性が強まる。中国はますますデカイ顔をするようになる。日本の防衛ラインは日本海のみになってしまう。

警戒しなくてはいけない話もある。北朝鮮が「在韓米軍を残したい米国」と取引して、中短距離ミサイルを撤去せず、維持してしまうシナリオである。「在韓米軍をそこそこ残しておきたいなら、オレの中短距離ミサイルがあったほうが、オマエにも好都合ではないか」と持ちかける可能性がある。南北の緊張が続くからだ。

ここは安倍晋三首相も注意する必要がある。朝鮮半島に横たわっているのは、核とミサイル、日本人拉致問題だけではない。「在韓米軍の撤退」という東アジア全体の戦略課題が水面上に浮上しかかっているのだ。

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