ネッシー伝説に科学のメス 湖水サンプルをDNA解析

再び注目される世界一有名な未確認生物
世界一有名な未確認生物、ネッシー。20世紀最大のミステリーとも言われ、昭和世代にとっては郷愁さえ感じさせるおなじみの怪獣だが、その存在はいまだ完全に否定されたわけではない。しかしついに、最新科学によって決着がつけられるときが来そうだ。
【写真】スコットランドで撮影された「ネス湖の怪獣」、1935年
  スコットランドで撮影された「ネス湖の怪獣」ネッシーのシルエットと言われてきた写真(撮影日時不明)。何百年もの間、ネス湖を訪れた人による目撃記録があり、湖の深い部分に棲んでいるとされてきた。(AP Photo) 

その湖はかなりの水深があるが、そこをめぐるほら話も負けず劣らずのスケールのように思える。スコットランドのネス湖の深みに潜むと信じられている怪物の目撃談は、何百年も前から、そこを訪れた人々によって語られてきた。

しかし伝説の「ネッシー」が隠れる場所は残されていないようだ。ニュージーランドの科学者が中心となった国際研究チームは6月にネス湖に行き、濁った湖水のサンプルを採取して、そこにどんな生物種が生息しているのかを特定するDNA分析を実施する予定だ。

【写真】イギリス・スコットランド北部に位置するネス湖
  イギリス・スコットランド北部に位置する、長さ36キロメートルのネス湖。写真手前に見えるのはアーカート城。(AP Photo)

オタゴ大学のニール・ジェメル教授は、彼自身はネッシーを信じていないが、人々を冒険に連れていき、その過程で科学について伝えたいと語っている。そのうえ、彼の子どもたちは、それが父親がやってきたことのなかで一番かっこいいことのひとつだと思っているという。

ネッシーをめぐる信じがたい説のひとつが、それは恐竜絶滅期をどうにかして生き延びたプレシオサウルス(首長竜)だというものだ。この怪物は実はチョウザメか巨大ナマズだ、という説もある。多くの人々が、目撃談はでっちあげであるか、あるいは水面に浮かぶ丸太や強風の影響で説明できると考えている。

ジェメル氏によれば、生物が水中を移動すると、小さなDNAのかけらが水中に残るという。それは皮膚や羽毛、うろこ、尿などに由来するものだ。

ジェメル氏のチームは、湖の異なる地点のさまざまな水深から水サンプルを300個採取する予定だという。フィルターで有機物質をこしとり、DNAを抽出したうえで、本来はヒトゲノムプロジェクトのために開発されたテクノロジーを使ってDNAの塩基配列を決定する。

DNA解析結果は、既知の生物種のデータベースと比較する。ジェメル氏は、2018年の年末までには答えが得られるだろうとしている。

「そこに怪物がいる可能性は低いけれども、その仮説を検証してみたいと思うようになった」とジェメル氏は言う。「結果としては、ネス湖の生物多様性についての非常によい調査ができるだろう」

ジェメル氏は、本当の意味での発見は、侵入種の蔓延のような状況が明らかになる点かもしれないと語っている。

【写真】オタゴ大学のニール・ジェメル教授
  オタゴ大学のニール・ジェメル教授。採取したDNAからネッシーの痕跡を見つける調査は2018年6月から開始される。(Christine Auste/Courtesy of Neil Gemmell via AP)

51歳のジェメル氏は、20代後半の休暇中にネス湖を初めて訪れた。それまでにネス湖を訪れた数多くの観光客と同じように、ジェメル氏は湖面に目をこらして怪物を見つけようとした。ネス湖の水に含まれるDNAを調べることを思いついたのは数年前で、そのアイデアは、7歳と10歳の彼の子どもも含めて、多くの人の共感を呼んだという。

ニュージーランド・スコットランド協会会長のグレイム・マチソン氏は、自分もネス湖を訪れて、湖面に目をこらした経験があり、ジェメル氏の成功を祈っていると語った。

マチソン氏は「彼の研究チームが何かを見つけることを期待している。ただ、いろいろな壁にぶつかるだろう」とする。「それでも、スコットランドに旅行するには良い方法だ」

ジェメル氏は、たとえ怪物のDNAが見つからなくても、ネッシーの存在を信じるのをやめない人々はいるだろうと語る。そうした人々からは既に、ネッシーは秘密の地下洞窟を通って海に泳いでいったあと、休暇を取っているという説や、ネッシーは地球外生物だからDNAを残さないという説を提案されているという。

「われわれは、人生においていまだに謎が存在することを願いつつ、最終的にはそのいくつかを解明するだろう」とジェメル氏は言う。「それこそ、発見の精神に欠かせないものだ。そして予想と違うものが見つかることもある」

(ニュージーランド・ウェリントン発AP 翻訳/熊谷玲美)