幼いころの犬を飼いたいという夢を30代で叶えた頃の折原さん 写真提供/折原みと
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置き去り犬「めぐちゃん事件」愛犬家の漫画家が憤った判決の理由

犬は「物」でしかないのか

<漫画家で小説家でもある折原みとさんは、八ヶ岳で「犬と人が一緒に楽しめるお店が欲しい」とドッグカフェ経営を試みたこともあるほどの愛犬家だ。その経営は5年で破綻するが、金銭的な負荷もさることながら、客の犬が店の前で事故に遭ったことも折原さんの心に大きな影を落とし、閉店を決意する原因になったという。その折原さんが今とても心を痛めていることがある――。>

最近、ある動物に関する裁判の判決が、愛犬家の心をざわつかせた。ゴールデンレトリバー、めぐちゃんの置き去り事件だ。

 

私自身も、先代の「リキ丸」に続き、現在は「こりき」というゴールデンレトリバーを飼っている。小学生のときから「大きくなったら犬を飼う!」という夢を持っていたが、ようやく実現させたのは30代になってからのこと。犬を飼える生活と環境、ひとつの命を守り育てるだけの自信と責任感を持てるまでには、それだけの年月が必要だったのだ。

現在、犬と暮らして21年目の私にとって、この事件は他人事には思えなかった。

念願の犬を飼うために東京から神奈川に引っ越し、「リキ丸」と暮らし始めた頃 写真提供/折原みと

雨の中で置き去りにされた犬

事の起こりは、2013年6月下旬のことだ。東京・吉祥寺にある公園に、一頭のゴールデンレトリバーが口輪をはめられ、リードで柵につながれていた。犬を保護した主婦Aさんは、警察、保健所、公園事務所に連絡。警察に預けると、保健所での収容期限が切れる数日で殺処分されてしまうことから、自宅で預かることにする。
 
SNSに飼い主を探す記事を投稿したが、飼い主は現れず。しかも、少し前にも別の場所に置き去りにされていたことがわかった。その時は、飼い主が現れて引き取られたが、再度の置き去り。Aさんは「めぐ」ちゃんと名付けたその子を家族に迎える決心をし、大型犬を飼える住居に引っ越した。が、3ヵ月後の9月中旬、めぐちゃんの「拾得物」としての期限が切れる10日前、元飼い主の女性が現れ、めぐちゃんを「返還してほしい」と申し出たのだという。
 
報道によると、元飼い主の女性は「犬を捨てたのは、会社の上司でもある交際相手の男性。彼を怒らせると、結婚が破談になり、職も失うと思い、今まで名乗り出ることができなかった」と説明したという。「その男性と別れ、犬を飼えるようになったので返してほしい」という元飼い主の言葉に、Aさんは納得することができなかった。どんな理由があれ、めぐちゃんの遺棄を容認し、3ヵ月も放置していた元飼い主を信頼することができず、めぐちゃんの返還を拒否。あくまで返還を望む元飼い主の訴えにより、めぐちゃんの所有権をめぐる裁判に発展してしまったのだ。
 
私がこの「めぐちゃん事件」のことを知ったのは、4年ほど前のことだ。ネットで事のあらましを知り、めぐちゃんの返還請求、慰謝料請求に対する署名集めに協力することにした。それがこちらの「【拡散希望】ゴールデンめぐちゃんの裁判に関する署名のお願い」というブログである(https://ameblo.jp/tatoushiiku-sos/entry-12069100049.html)。

ゴールデンは、だいたいにおいて甘えん坊だ。人が大好きで、愛されるために生きているような犬種。うちの「こりき」は、私が出かける時、いつも決まって二階のベランダから悲しそうな顔で見送っている。二度も公園に置き去りにされためぐちゃんは、どれほど心に深い傷を負ったことだろう。

保護したAさんの SNSの記事によると、雨の日に遺棄されためぐちゃんは雨が降ると落ち着きをなくし、分離不安も強かったそうだ。Aさん家族の元で愛情をいっぱい受け、心の傷が癒えてきたのなら、そのままでいる方がめぐちゃんのためなのではないかと思った。今になって元の飼い主さんに戻したら、めぐちゃんはまた「捨てられた」と思うのではないかと心配だったのだ。