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ライフ 週刊現代

祇園で火災を起こした三つ星割烹の「京都ならでは」の悲劇

ややこしい問題が次々と…

京都でも有数の老舗が火元になった火災。店も常連も失って、主人は失意に暮れていることだろう。しかし京都という土地柄、最もこたえるのは周囲からの厳しい視線。茨の道が待ち受けている。

三島由紀夫も通った名店

5月12日の昼過ぎ、大勢の観光客でにぎわう週末の京都・祇園の街に煙が立ち込めた。

八坂神社や南座などの観光スポットからほど近い四条通。それに面した細い路地を通り抜けた先にある高級割烹『千花』から出た火は、あっという間に燃え広がり、最終的に7棟を焼いた。

「最初は白い煙が出ていたんやけど、だんだん色が濃くなりました。それで、いったん火が消えたかなと思った矢先に『ボン!』とプロパンガスが破裂したような大きな音がしました。

千花さんの敷地の裏には無人の家があるんやけど、その壁を壊して消防車のホースを通してひたすら放水していた。結局、消火活動が終わったのは18時ごろやった」(近隣の呉服店で働く女性)

 

先代店主・永田基男氏が1946年に創業した千花は『ミシュランガイド京都・大阪』で2010年から9年連続の三つ星に輝く名店。基男氏が他界した'06年からは、長男の雄義氏が店主として切り盛りしていた。

「女将さんからは、白洲次郎夫妻や三島由紀夫が足繁く通っていたと聞いています。最近だと、俳優の津川雅彦さんや渡辺謙さんをお見かけしたことがありますね」(千花の常連客)

同店を幾度となく訪れている作家の藤原敬之氏が言う。

「店に入ると、木のカウンターの向こうに色とりどりの食器がずらっと並べてあるのですが、その中に乾山のような逸品がさりげなく混じっている。

季節の素材を適切な温度管理と繊細な調理で出してくれる店ですが、必ず出てくるのが、ゆばの酒肴と、大葉の細切りと柴漬けをからめたご飯。そして、りんごとオレンジとすだちのミックスジュースが最後の水菓子です。

これが千花の定番でした。あの五感を研ぎ澄まされるような雰囲気をもう味わえないとは、無常感があります」

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