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底辺校とは言わせない!子供の貧困に向き合う「槙尾高校」校長の叫び

再チャレンジできる学校の教育論
小学校・中学校では「うまくいかなかった」生徒を教師たちが支える、首都圏下の某高校(注:生徒のプライバシーを守るために、以下「槙尾高校」と仮名で表記)。その槙尾高校を約4年の長きにわたって取材し、1冊の本にまとめたノンフィクション作家の黒川祥子氏。本書を執筆するきっかけとなった、ある出来事と、槙尾高校で出会った熱血校長の教育論について記してもらった。

「普通」の暮らしを知らない子が増えている

今、高校生から「普通」の暮らしが消えているーーそれまで一切、見えていなかった厳然たるこの事実に、私はいつ気づいたのだろう。これこそ、槙尾高校の取材を通して何よりも強く痛感したことだった。

槙尾高の教職員の前に現れるのは、たとえば、このような生徒たちだ。

ひとり親家庭で、その親も異性と暮らすために家を出て、一人暮らしを余儀なくされている子。

親がいても学校に行くよう起こされることもなく放置されている子。

家庭料理とはコンビニ弁当かインスタント食品か冷凍食品だったりと、親の手料理を一切知らない子。

ステップファミリーとなった幼いきょうだいたちの面倒で、がんじがらめになっている「ヤングケアラー」の子。

家計を支えるため深夜までアルバイトをしながら学校に通っている子、中にはキャバクラから登校する女子高生もいる。

親が働く姿を目にしたことがない、生活保護世帯の子どもたちも多い。

実際、槙尾高校のような「底辺高」、あるいは「課題集中高」「教育困難高」などと形容される高校にたどり着くのは、大半がこのような生徒たちだ。

「子どもの貧困」が叫ばれて久しいが、スマホをいじり、ばっちりメイクをする女子高生たちの姿に、生きるのもままならない、このような過酷な現実を、私は槙尾高校取材の前には想像することすらできなかった。

いや、一度だけ、その片鱗を知った取材があった。

 

18歳・未婚の母

生活保護率が高い、都内のある自治体で、生活保護世帯の子どもたちの取材を始めた時だった。

取材のきっかけは、若者支援を行うNPO職員のこんな言葉だった。

「今、生活保護の世代間連鎖が増えています。三世代連鎖もざらにあります」

今から7〜8年前のことだったと思う。今では普通に語られる「貧困の連鎖」という言葉に当時の私は強い衝撃を受けた。

この目で確認しないわけにはいかないと、生活保護費の受給日を狙い、福祉事務所を訪ねた。

その私の前に、乳飲み子を抱いた長い髪の綺麗な少女が現れた。

18歳の未婚の母だった。

母子家庭で生活保護、母はお金だけ置いて出かけ、深夜まで帰ってこない。家では酔って寝ているだけ。

自分はそんな母のようには絶対にならないと、中堅校でがんばっていた彼女だが、高2の終わりに同級生の子を妊娠、高校を中退し、生活保護を受けながら、頼りにならない母と子育てをしていた。

彼女の話をあるメディアに書いたものの、現状を伝えたに止まり、そのときは解決策を提示することはできなかった。