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大人になってからの家庭生活は、発達障害者の学習の重要なステージ

凸凹夫婦の家庭改革メソッド【2】

現代ビジネスの好評連載を書籍化した『されど愛しきお妻様』。おかげさまで売れ行き好調ではあるのですが、「奇跡の夫婦の物語」と捉えられてしまったことが残念と同時に、もっと実践的な内容も盛り込めばよかった、と反省。というわけで、どんな「すれちがい」のあるご家庭にも応用可能な超・実践的スピンオフ連載待望の第2回です。

*第1回はこちら http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55670

いまだ根強い発達障害差別

片付けられない妻や、家事しない夫。パートナーが不定形発達(発達障害)でお困りごとを抱えたカップルやご夫婦に、そんなお子さんを抱えたご家族に、そして不定形故に家族に理解してもらえずに苦しんでいる当事者に、届けよ我が家のへっぽこ家庭改革メソッド! 

ということで始めさせて頂いた本連載なのだが、実はしょっぱなからブチ当たる問題がある。

前著『されど愛しきお妻様』の読者からの感想を読み解く内に、前回指摘したような「凸凹家族はどちらもが苦しんでいるケースが多い」という気づきに加えて、もう一つ、世の中には僕が考えていた以上に「障害者を受け入れられない空気」が根強く残っていることを痛感せざるを得なかったのだ。

感覚のズレと我が不勉強を呪った。

むしろ昨今の(障害者自立支援法以降の)社会には発達障害の認識が安易かつ過剰(かつ微妙に誤って)に浸透しすぎで、「ビジネス化した投薬医療やなんちゃって療育の飯のタネにされては困る」と危惧していた僕だったのだが、それ以前の問題だ。

~~身内に障害者がいてなるものか、自分が障害者であってたまるか~~という感覚。

もうそろじき21世紀に入って四半世紀経とうという現代の世の中で、まだそんな偏見や差別ベースで物を考える人が一定数いることに、衝撃を受けた。

特にノイジーマイノリティのわめき声が目立つネット社会では「彼らに配慮してたら社会が立ち行かない」とか「マジ職場にいると迷惑だから消えて欲しい」「発達障害だから配慮が受けられますとかズルくねえ?」みたいな露骨な批判的言説まで垂れ流されていることを知って、真っ青になった。

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さあどうしよう……。発達に凸凹のある家庭内環境やパートナーシップの改革のスタートラインは、まずは一方に何らかの発達の問題があることを受け容れることなのに、「その受け容れ自体が障害」では始まらない。

とはいえ困ったな……と深々考え込んでしまうのは、実は我が家の場合、お妻様の脳に発達の不定形があることの受容には、僕にもお妻様にもほぼなんの抵抗もなかったからだ。

僕自身はそもそも仕事(社会的困窮者の当事者取材)として、多くの発達障害(様の人々も含む)当事者に接して来たし、障害者を含む社会的弱者に対する差別の払拭が、そもそもの仕事の目的でもあった。だから、改めてお妻様のやれない様々なことの背後に彼女の脳の問題があることを理解して、配慮と支援が足りなかった自らへの反省と後悔以外の感情はなかった。

一方のお妻様はと言えば、子ども時代から不定形発達ゆえのやれないことを「努力が足りない」とか「もうちょっと考えろ」なんて責められて苦しみ続けてきた。そんな彼女に取って、「やれない理由」が分かったことは、むしろ救いになっているように僕は感じた。

 

「で、実際のところどうですかお妻様?」

「どや!って感じだ」

なんじゃそれは。

「今さら?っていうの? あたしは子どものころから親からも学校の先生とかからも大ちゃんからも、散々駄目な子認定されて来てだな。頑張っても駄目で、いまさら障害があったって言われたら、『やっぱそうだったんじゃん』としか言いようがないよ。どや! あたし頑張ったもん」

ああ認めよう。確かにお妻様は、結果は伴わないがメチャメチャ頑張って来た。彼女にとっての受容は、無理に頑張ってきた過去の自分への肯定へと、ストレートにつながったのだと思う。

とまあ、障害受容にまったく抵抗感のなかった我が夫婦。自分たちが乗り越えたことのない壁の乗り越え方を、説得力をもって言語化する自信がない……。ならばここは、敢えて我が家の「結論」から斬り込んでみよう。

お妻様に不定形発達という問題があることをすんなり受容して家庭と関係性の改善に挑んだ結論は、お妻様と僕の双方に「断然お得♪」という感覚が残ったということだ。もの凄く良い買い物をしたあととか、思いがけずずっと欲しかった宝物をゲットしたみたいな、そんなテンションの上がるお得感だ。

「そうだよねお妻様。どのぐらいお得だった感じ?」

「マ・クベの壺を拾った的な感じだ。あれはいいものだあああああ(爆発)」

お前それ全然読者に伝わらないよ。けどそれがお妻様にとって最上級の壷(お得感)なのを、僕は知っている。

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