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経済・財政 国際・外交

イタリアが一気に「ユーロ経済の火薬庫」へと豹変した深刻な理由

ポピュリズム政治と銀行セクターの不安

現在、米国と中国の景気安定に支えられ、世界経済は全体的に緩やかな回復基調を維持している。

1~3月期は天候不順などの影響によって主要国の経済成長率がやや下振れたものの、4~6月期以降はその影響が解消され、従来の回復ペースに戻るとの見方も多い。経済に焦点を当てると、今すぐ米国などの景気減速懸念が高まる展開は想定しづらい。

一方、世界的に政治リスクは高まっている。米国のトランプ大統領に加え、ここへ来てイタリアへの懸念が強くなっている。五つ星運動と同盟による連立政権の政策は、同国の財政を悪化させるだろう。その懸念から、イタリアでは金利が上昇している。

それに加えて、イタリアには銀行の不良債権問題もある。財政悪化懸念が高まる中、イタリア銀行セクターの株価は軟調に推移しやすい。状況によっては、それが他のユーロ加盟国の銀行株の下落に波及することも考えられる。

 

ポピュリズム政治が台頭するイタリア

1999年1月、欧州の単一通貨であるユーロが導入されて以降、イタリアの一人当たりGDPは殆ど増えていない。他のユーロ加盟国は、ドイツの信用力に裏付けられた単一通貨を用いて購買力を高め、経済成長を遂げてきた。

しかし、イタリアはそれが達成できていない。その結果、同国では、所得が増えない社会への不満が蓄積されてきた。

3月4日に実施されたイタリア総選挙では、社会保障などの拡充を重視するポピュリスト(大衆迎合的な)政党である五つ星運動と、同盟が、議席を増やした。それは、イタリア社会が、長期の視点で構造改革を進め潜在成長率を引き上げることよりも、給付の拡大など目先の経済的な利得の確保を優先したことの表れだ。

この意味は大きい。ポピュリスト政治家が有権者の支持を確保するためには、財政拡大が必要だ。すでに、両党からなる連立政権は、低所得世帯向けの給付制度、年金支給年齢の引き下げを社会保障政策に取り入れようとしている。

今後は、財政出動拡大のために、新政権が憲法を改正し、EUが認める以上に支出が増える展開も考えられる。

その懸念が、イタリア国債の流通利回り(金利)を急上昇させた。これは、有権者の支持獲得のために公的な資金がばらまかれ、財政が悪化するとの見方を反映した“悪い金利上昇”だ。

今後の財政運営を巡ってイタリア政府と欧州委員会の見解が対立することもありうる。そうなれば、ポピュリズム政治家は一段とEUに対する懐疑心を強めるだろう。

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