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日米の株価比率とドル円レートの「知られざる関係性」

レートの予測には役に立たないが…

日米金利差で為替レートは語れない

このところ、円安が、米国の長期金利上昇と同時に進み始めたこともあり、「日米金利差から考えると…」という為替アナリストのコメントが増えてきたように感じる。

しかし、この手のコメントでは、「金利差」が、具体的に何を指すのか、もっと詳しくいえば、どの年限を指すのか、また、これが名目金利差なのか実質金利差なのかが極めて曖昧である。穿った見方をすれば、その時々で異なる「金利」の概念を都合よく使っている感が強い。

そこで、実際に金利差と為替レートの関係をみたのが図表1と図表2である。図表1は、日米の10年物国債利回りでみた金利差とドル円レートの関係を、図表2は、日米の5年、及び7年物のインフレ連動債利回り差でみた金利差とドル円レートの関係を示したものである。

図表1は「名目金利差」と為替レートの関係、図表2は、「実質金利差」と為替レートの関係を示したものであるが、両者ともコレを用いて為替レートを予想するには説明力は決して高くない(「実質金利差」はインフレ連動債利回りを用いて計算したものだが、発行量、流通量が少なく、日本のインフレ連動債利回りを連続してとることが不可能であるため、5年物と7年物の2つの利回りを用いた)。

図中の2010年1月以降でみれば、名目金利差と為替レートの相関係数は0.5、実質金利差と為替レートの相関係数は5年物が0.70、7年物が0.65となっている。相関係数だけみれば相関がないというわけではないが、それでも図を見れば、大きくずれる部分がある。

 

元来、為替レートと金利の関係は、「短期金利差」と該当する期間の為替レート変化率(例えば、金利が3ヵ月物金利である場合は対3ヵ月前比の変動率)で考えるのがセオリーであるが、2000年代に入ってから、日米ともゼロ金利・量的緩和政策を採用したため、短期金利差で為替レートを説明することができなくなっている。

そこで、日米で金融緩和が進むにつれ、為替アナリストが為替レートを説明する際に利用する金利の年限が逐次的にどんどん長くなっていったのだろうと推測する(筆者は金利差を用いないため推測にすぎない)。

確かに、長期金利の中にも将来の金利予想がビルトインされているため、将来の短期金利予想で為替レートが動くという前提に立てば、為替レートを長期金利差で説明することもあながち誤りではないようにも思える。だが、長期金利は、将来の短期金利予想の上に「(年限別の)リスクプレミアム」が上乗せされることで形成されている。

従って、長期金利差で為替レートを説明しようとすると、将来の短期金利予想(これは将来の金融政策の予想に直接リンクする)に加え、リスクプレミアムの動きを正確に予想しなければならない(後述するが、できれば、リスクプレミアムの部分だけを抽出することが望ましい)。

この長期金利の「リスクプレミアム」を正確に把握するためには、「金利の期間構造モデル」といわれるものを構築する必要がある。「金利の期間構造」とは、年限別の金利の関連性を考慮した金利モデルである。

「各年限の金利の関連性」というのは、簡単にいえば、「イールドカーブ」で表現され、分析的には、このイールドカーブの形状の変化を全ての年限に共通するいくつかの変動要因に分解するというやりかたをとる。従って、金利の分析はそのままイコール「イールドカーブの分析」ということになる。

だが、ゼロ金利・量的緩和の局面における「金利の期間構造モデル」というのは構築が極めて困難である。いまでもファイナンスや金融論の学者が試行錯誤して論文を発表しているが、いまだにこれといったものが存在しない。従って、理論的にも実務的にも、現局面で、日米金利差から為替レート動向を考えるのは非常に難しいのが実情である。

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