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日本人は年々眠らなくなっており、5人に1人は睡眠に問題を抱えているといわれます(厚生労働省の調査)。ともすると個人の問題に考えられがちですが、今では「ストレスチェック」の義務化や「働き方改革」「女性活躍」などの提言、睡眠不足がもたらす経済損失の試算により、個人の問題に止まらず、企業そして国家レベルの問題に発展しています。

これらを背景に、これから大きく成長しようとしているのが「睡眠ビジネス」という市場。すでに1兆円を超えるポテンシャルがあると見込まれています。

そして、機能性食品や寝具といった既存の分野だけでなく、新たに形成されようとしているのが、ITやテクノロジーの力で睡眠の問題を解決しようという「睡眠テクノロジー(=スリープテック)」です。

「CES 2018」で紹介されたSomnox社の抱き枕/Photo by Gettyimages

毎年年始にラスベガスで開催されるコンシューマーエレクトロニクスショー「CES 2018」では、初めてスリープテック・ゾーンが新設されました。今、世界が睡眠に注目しているのです。

日本人をとりまく睡眠事情を紐解きながら、スリープテックの今を見ていきましょう。

日本人の残念な睡眠事情

2014年、OECD(経済協力開発機構)が世界29カ国の15〜64歳の男女を対象に、平均睡眠時間を調べた調査結果を発表しました。日本は韓国の7時間41分についで、7時間43分とワースト2位でした。

7時間も寝ていれば十分じゃないかと思われるかもしれません。ここで20歳以上の日本人男女の睡眠時間を調査した「平成27年国民健康・栄養調査報告」を見てみましょう。

30代では6時間以上7時間未満、40代では5時間以上6時間未満が40%近くなっており、「1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合は、ここ数年で増加傾向にある」とされました。いわゆる働き盛りの睡眠時間が大幅に削られているのです。

2018年2月に健康機器メーカーの株式会社フジ医療器が、20歳以上の男女4,303名を対象に行った睡眠に関する調査「第5回 睡眠に関する調査」の結果はさらにリアルです。

これによれば、自分の睡眠に不満がある人は92.6%で、睡眠に不満がある人のうち、4人に1人が「寝ても疲れがとれない」と訴えていることが分かったそうです。

睡眠不足で経済損失15兆円!

イケアによる2012年の試算によれば、東京圏(744万人)における睡眠不足の損失額は4757億円とのこと。

2016年の米国ランド研究所の調査では、日本人の睡眠不足による経済損失はなんと年間約15兆円、国民総生産の2.92%に相当すると発表されました。この比率は世界ワースト1とのことです。

日本大学医学部の内山真教授によるある製薬会社における調査では、勤務中の眠気で作業効率が4割低下しており、作業効率の低下や欠勤などの損失、交通事故などの損失を合計すると、なんと約3兆4690億円に達したといいます。逆に睡眠障害の予防により、1兆6000億円の医療費が節約できるとも言われました。

睡眠不足は、単に「眠い」だけではありません。脳が休息できず、体のメンテナンス機能が働かないことを意味します。

これにより、ストレスの増加、肥満、免疫力の低下、血圧上昇、生活習慣病(糖尿病、高血圧、歯周疾患、心房細動、脳卒中、虚血性心疾患、突然死など)のリスクが増加し、認知機能の低下によるヒューマンエラーが起こりやすくなります。イライラしやすいなど精神的に不安定な状態にもなりやすく、うつ病に発展するリスクも高まります。眠らないということは、心身に大きなダメージを蓄積させていく行為なのです。

2015年12月から50名以上の全事業場を対象に「ストレスチェック」が義務づけられました。これは自分のストレス がどのような状態にあるのかを調べる検査です。

うつなどのメンタルヘルスの不調の背景には、必ずといっていいほどストレスによる不眠が隠れています。心の不調を未然に防ぎ、損失を最小限に抑えるためには、会社として睡眠の問題と取り組まざるを得ないのです。