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抗うつ剤を減薬したら、早々に「性欲」が戻ってきた話

私的「減薬・断薬」放浪記【3】

ノンフィクション作家の上原善広さん、実は長年に渡り心療内科に通い、大量に服薬していました。しかし一向に症状は改善せず、服薬を続けることに疑問を抱き"減薬・断薬"を決意。本連載ではその一部始終をお届けします。

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よく風邪をひくように

減薬を始めたのは2016年11月だった。

開始した直後は「ちょっと鬱っぽいかな」というレベルだったが、やがて頭が重く感じて寝込むようになってしまった。

さらに様々な症状に悩まされた。中でも側頭部の筋肉がひどく凝るようになり、自分で頭を揉んだり家族に揉んでもらったりを1日の中でも何度か繰り返した。これは服薬しているときから出ていた症状だが、減薬を始めるとよりひどくなったのだ。

精神薬や睡眠薬を始めると、1ヵ月ほどで依存状態になるのだが、脳内が薬ありきになってしまうため、脳内の伝達物質が出にくい状態になってしまう。これが依存の始まりだ。薬が入ってくるのが当たり前の状態になっているところへ、薬を減らし始めるのだから、薬で補っていた脳内物質が出なくなる。そのため様々な離脱(禁断)症状が出るのだと考えられている。

離脱症状には倦怠感、不安感、不眠など様々あるが、「筋肉への作用」もその一つだ。私の場合は、側頭部の表面にある筋肉が過度に緊張するようになったのだが、耐えられないほどの肩こりに悩む人もいるし、ひどい人になると痙攣を起こすこともある。

減薬による脳内活動の変化が神経に及び、筋肉をこわばらせてしまうためだ。現れる症状は各個人でまったく違うのと、筋肉の症状なので、薬のせいだということがわかりにくい。私も、この側頭部の過緊張が減薬によるものだとわかったのは1年以上たった、つい最近のことだ。

 

俗に「自分の身体のことは、自分が一番よく知っている」という言葉があるが、逆に私は「薬によって、人はここまで自分の身体を客観視できなくなるものか」と思った。ただ「自分の身体のことは、自分が一番知っている」というのは、様々な意味で基本的にはその通りだと思う。

しかし実際には自分の身体に起こっていることは、当人には中々わかりにくいものだ。ましてや6年間にわたって、脳に強烈に作用する薬を飲み続けていたのだから、自分の身体のことがわからなくなってしまって当然だといえる。

私自身は「よく頭がこるな。ちょっと疲れすぎかな」と思って揉んで耐えていたが、痛みや不快感に対処するのが精一杯で、その根本的な原因にまで考えが至らなかった。もちろん根本原因に気づけたとしても、揉んで緩和するくらいで、結局は我慢するしかないのだが。

しかし17年3月頃から、減薬・断薬の専門家である田島治医師のもとに通い始めたのは大きかった。私は田島医師の診察を受けることで、自分の身体に対する客観的な意見を聞くことができた。具体的には、例えば今の不調の原因のほとんどは減薬による一時的なものだということなどを知るようになった。これは減薬という、孤独な苦しみに喘いでいる者には心強いことだった。

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またこの時期は、風邪もよくひいた。年末から17年2月にかけて、ひどいときには2週間に一度くらい熱を出して寝込むようになった。寝込んでいて体力が落ち、さらに精神的に不安定な状態だったので、免疫が一時的に下がっていたのかもしれない。

風邪のためにさらに外出が億劫になり、人に会うと、それだけで疲れて2、3日寝込んでしまうことが続いた。そのため外出の予定ができたときは、その前後を空けて休養するようにしなければならなくなった。自由業(ルポライター)でなかったら、とうに失職していたかもしれない。

とはいえ、寝込んでいる間は無給だから、経済的に困窮するのは目に見えていた。だからこの時期、私はバイトにつくことを毎日考えて過ごしていた。なぜなら、人に会ってこれだけ疲れるのだったら、取材活動はもうできないと思ったからだ。毎日どのようなバイトならできるだろうかと考えてばかりで、とにかく不安でしょうがなかった。

好きだった料理もできなくなり、何かに対する興味や好奇心ももてなくなっていた。ただ、これは服薬しているときから出ていた症状だし、減薬によってそれが一時的に強く出ていることはわかっていたので、何とか耐えなければと我慢していた。