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プロが教える「いい特養」はここが違う

食事が選べる 家族も泊まれる全国施設

介護だけが目的じゃない

「入居者の方が『刺身を食べたい』とおっしゃることがあります。しかし、保健所の指導などがあって、施設内ではなかなか出しづらい。そんな時は、ご家族を呼んで一緒に外出をしていただき、そこでお刺身を買って食べてもらうという対応をしています。

施設としては、いろいろと手続きもあるし手間はかかります。しかし、頭から『無理』と言うのではなく、いろいろと工夫をして、なるべく入居者の方の要望に応えたいと思うのです」

兵庫県宝塚市にある特養「中山ちどり」は高台に位置し、窓から見える宝塚の町並みが美しい。隣にある幼稚園からは楽しげな園児の声が聞こえてくる。

刺身のエピソードを語ったのは、この施設を運営する社会福祉法人晋栄福祉会の総合施設長・内池正記氏である。

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晩酌をすることが日課だった入居者もいた。別の施設であれば「晩酌は無理」と諦めさせられていたところを、中山ちどりでは、健康、医療上の問題をクリアしたうえで、晩酌をさせてもらえるようになった。

特養に入ってからも自分の好きなお酒を飲むことができる。大きな幸せだろう。

「この施設では、『普通の生活』を送っていただくことを意識しています。普通と言っても、刺身を食べたいとか、晩酌をしたいとか、様々な『普通』があるから、それに応えるのはなかなか大変です。

でも、今後も利用者の方に選んでいただくためには、こうした姿勢を保っていくことは大切だと思っています」(内池氏)

 

自分の好きなものを選んで食べ、飲む。かつて元気で暮らしていた時には「普通」だと思っていたことを、介護が必要になっても続けられる――。

シンプルだが、老後を楽しく、幸せに過ごすためには、極めて重要だ。しかし、この条件を満たす特養は多くはない。

特養において、そうした主体性を持った「普通の生活」を実現するために重要な要素の一つが「介護」だ。

かつて多くの特養では、入居者が常にベッドの上に放置され、寝たきりにさせられていたことがあった。要望が聞き入れられるどころか、「モノ」のように扱われる施設も珍しくなかった。

だが、ここで紹介する特養は違う。今回、施設の質を担保する「認証機関」やベテランのケアマネージャー、ジャーナリストなど、最新の現場に精通した9名の識者に、58の特養を選んでもらった。こうした特養では、入居者が自分の意思で動ける環境を実現する。