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アメリカ 北朝鮮

対北朝鮮外交でイケイケのトランプも、国内では尻に火がついていた

回り回って、北に弱みを握られる結果に

手加減なしの質問の数々

日本では米国に関する報道はもっぱら北朝鮮外交一色ですが、トランプ陣営とロシア政府の共謀疑惑、いわゆる「ロシアゲート」もその裏で大きく動いています。捜査にあたっているロバート・モラー特別検察官と、ドナルド・トランプ大統領の激しい「心理戦」が展開されているのです。

4月末、モラー特別検察官が、ドナルド・トランプ米大統領の弁護士チームに――つまりトランプ大統領に対して提出した「質問リスト」が報じられました。

米ニューヨーク・タイムズ紙(2018年4月30日付電子版)が掲載したモラー氏の質問44個をすべて読むと、質問はマイケル・フリン元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、ジェームズ・コミー前米連邦捜査局(FBI)前長官、ジェフ・セッションズ司法長官に関係するもの、そしてトランプ陣営とロシアの共謀に関する質問で構成されていることが分かります。

それぞれの質問内容に、モラー氏の狙いが透けて見えます。

 

例えば、「フリン氏が2016年12月下旬にセルゲイ・キスリャク駐米露大使と連絡をとったことについて、何を知っていますか」という質問。

フリン氏は「トランプ政権が発足したらロシアに対する制裁を緩和するので、オバマ政権がかけた制裁には過剰反応をしないように」とキスリャク駐米露大使に伝えたといわれています。仮にトランプ氏がこの件を把握していれば、トランプ陣営がロシア政府と政策面で調整を図っていた証拠になります。

「2017年1月27日にコミー氏と夕食をした目的は何ですか」という質問は、トランプ大統領が司法妨害をおこなった疑惑を探るものです。トランプ氏はコミー氏が自らの側につき、フリン氏に対する捜査をやめることを期待していたとみられています。

しかし、コミー氏は捜査をやめなかったので、トランプ氏は彼を解雇したというのが大方の見方です。もし上記の疑惑が証明されれば、司法妨害に当たります。

さらに、「セッションズ氏があなたを守る意思があるかどうか、過去の司法長官の例を出して彼と議論しましたか」は、ロシアゲートの捜査に関するトランプ大統領の心境を探る質問です。

トランプ氏は、オバマ政権の司法長官であったエリック・ホルダー氏を取り上げて、「ホルダーはオバマ大統領を守った」と主張しました。これはセッションズ氏に対して、トランプ大統領が間接的に「なぜお前は私を擁護しないのか」と迫ったようなものです。

「トランプタワーで行われた会合についていつ知りましたか」という質問は、2016年6月9日にニューヨーク市のトランプタワーで開かれたドナルド・トランプ・ジュニア氏、娘婿のジャレッド・クシュナー氏、選対会長のポール・マナフォート氏とロシア人女性弁護士との会合に関するものです。

ジュニア氏は、この会合について「父親(=トランプ氏)には伝えなかった」と発言しました。一方でスティーブン・バノン元首席戦略官兼大統領上級顧問は、暴露本『炎と激怒』の中で、ジュニア氏がロシア人弁護士をトランプ氏に紹介した可能性を語っています。モラー氏は、ジュニア氏とバノン氏の発言の矛盾を突こうとしているわけです。

今後トランプ大統領本人の事情聴取が行われる際には、こうしたモラー氏からの「痛い質問」の数々にトランプ氏は答えなければなりません。客観的に言って、トランプ大統領はかなり追い詰められています。

モラー特別検察官(Photo by gettyimages)

しかし、トランプ大統領は事情聴取に応じるでしょうか。彼は「(ロシアゲートの)捜査が公正に行われるならば、聴取を受け入れる」と述べていますが、トランプ氏の弁護チームに加わったルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長は「大統領は事情聴取に応じる義務はない」とインタビューで述べ、モラー氏の要求を突っぱねています。

仮にトランプ大統領が聴取に応じない場合、モラー氏は大陪審に大統領を召喚する可能性があります。米国の歴史上、大陪審から任期中に召喚状を受けた大統領はビル・クリントン氏ただ1人ですが、トランプ大統領が2人目になるのかもしれません。

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