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日本の悪夢と呼ぶしかない「赤い朝鮮半島」誕生の現実味

これは、そう遠い未来の話ではない

「半島全体の非核化」がもつ意味

韓国と北朝鮮が合意した「板門店宣言」がそのまま実現したら、日本にどんな影響があるのか。朝鮮半島全体が統一された「赤い朝鮮」になって、強力な「反日国家」が誕生する可能性がある。それは日本の悪夢ではないか。

6月12日に予定される米朝首脳会談を前に、米国と北朝鮮が水面下で交渉を続けている。内容は明らかになっていないが、気になるサインがいくつか出ている。

たとえば、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が5月9日、米国のポンペオ国務長官と会談した際、北朝鮮の国営メディアである朝鮮中央テレビは「トランプ大統領が口頭メッセージで新たな代案を示し、…最高指導者が高く評価した」と報じた。

正恩氏が「高く評価した新たな代案」とは、なんだったのか。

 

また、ポンペオ氏が北朝鮮に拘留されていた3人の米国人を連れて帰国した際、大統領は記者団に「もっとも誇らしい成果は、これ(注・米国人の帰国)もその一部だが、半島全体(entire peninsula)の非核化を達成したときだろう」と語っている(https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-president-trump-arrival-americans-detained-north-korea/)。

「半島全体の非核化」という言い方は、韓国と北朝鮮が板門店宣言で合意した用語と同じだ。米国は「北朝鮮の非核化」を要求してきたのであって、朝鮮半島の非核化を求めていたわけではない。そうだとすると、トランプ氏は高揚した気分で言葉が走っただけなのか、それとも北朝鮮の要求を認める立場に変わったのか。

まず、板門店宣言を確認しよう(http://www.afpbb.com/articles/-/3172902)。

宣言は、南北が5月1日から軍事境界線一帯で「あらゆる敵対行為を中止し、…今後、非武装地帯を実質的な平和地帯にしていく」としたうえで、次のように書いている。

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南北は、軍事的緊張が解消され、互いの軍事的信頼が実質的に構築されるのに伴い、段階的に軍縮を実現していくことにした。

南北は、休戦協定締結65年になる今年中に終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制構築のための南北米3者または南北米中4者の会談開催を積極的に推進していくことにした。

南北は、完全な非核化を通じて核のない朝鮮半島を実現するという共同の目標を確認した。
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この宣言を受ける形で、米朝は首脳会談に向けて準備を重ねている。そうした中で、トランプ氏が「半島全体の非核化」という言い方をして、かつ正恩氏が「トランプ氏の新たな代案を高く評価した」となると、大統領は北朝鮮の求める「半島の非核化」を容認した可能性がある。

米国はブッシュ(父)政権時代の1991年に韓国から最終的に核兵器を撤去した。したがって「半島の非核化」と言っても、単に「南北朝鮮に核がない状態」を意味するのであれば、すでに韓国に核はないのだから、北朝鮮が非核化すればいい話になる(https://www.shikoku-np.co.jp/feature/hasegawa_column/20180429.htm)。

だが、北朝鮮は「それならオレたちに韓国の米軍基地を査察させよ」と言い出すだろう。実際、北朝鮮は1992年の南北非核化共同宣言を結んだ際、米軍基地に対する査察を要求した。宣言自体にも南北双方による査察が盛り込まれている(https://thekoreanpolitics.com/archives/598)。

今回、米国が「半島の非核化」を認めたうえで、査察を断るなら、北朝鮮は「それなら信用できない。ならば米軍基地自体を撤去せよ」という話になるのは確実だ。つまり、論理的に「半島の非核化」とは、米軍の韓国撤退要求につながるのである。