経済・財政

国の借金を返す姿勢が見えないのに、国民には増税っておかしくない?

そりゃ増税延期論が出てくるわけだ
磯山 友幸 プロフィール

増税のための理由付け?

1000兆円という借金にしても、資産が600兆円以上あるので、差し引きのネットにすれば決して多い金額ではない、という見方もある。だが、いずれにせよ、毎年毎年の国家予算が赤字で、借金が増え続けていく事が健全であるはずはない。

ところが、政府は、本気で借金を減らそうとしている気配はない。国の借金を問題視する財務省にしても、借金を減らすことを目標にしていない。

1000兆円を超える借金で問題だと大騒ぎするのは、「増税を国民に納得させる理由」にみえる。借金財政を立て直すには増税は不可避だ、と国民を説得するためで、むしろ借金が増えていくことを歓迎しているようにすらみえる。借金が過去最大を更新した責任をとって辞めた財務次官も財務大臣もいないのだ。

財務省は予算も作るが、2018年度の一般会計予算は97兆7128億円。6年連続で過去最大を更新している。膨らみ続ける社会保障費の伸び率を抑制するのがせいぜいで、予算を削減しようという動きにならない。

借金返済などを除いた基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の黒字化もできていない。そんな赤字予算を国会議員は賛成して通しているのだ。

もちろん、政府予算を圧縮すれば、景気にマイナスの影響を与えるという理屈も分かる。長く続いた大幅な公共事業の削減が、地方経済を疲弊させた面はある。

だが、景気にあまり影響のない歳出をカットし、より効果のある分野に振り向ける歳出先の見直しを行えば、もっと有効な予算の使い方ができるに違いない。ところが、今は、景気回復で税収が増えているものを歳出の拡大に振り向けている。

 

本気で借金圧縮を考えていない

一般の家庭が借金を抱えた場合、どうやって借金返済をしようと考えるか。支出を減らして収入のうちの借金返済を増やすのが第一だが、それでも借金が減らなければ持っている財産を処分して、借金返済に回すだろう。

ところが、日本政府はそうした努力はほとんどしていない。政府系機関の民営化と株式売却もなかなか進まない。本気で借金を返すのなら、日本郵政の株式はさっさと売り、政府系金融機関も株式上場して民有化を進めるべきだろう。

こうした資産売却は巨額の借金を抱えた国はどこでもやってきたことだ。旧ユーゴスラビアなど共産圏の国々では、国有企業やインフラなどが民営化され売却された。その多くは外国企業の支配下に入った。

日本国債は今ならば国民が持っている。本気で国の資産を売却しても多くは日本国民が持つことになるだろう。

政府も財務省も、国の借金を減らすためには増税が不可欠だ、という姿勢を強めて来るに違いない。とくに2019年10月の消費税増税は、財務省としては何が何でも譲れない。消費税率が8%から10%になれば、計算上は2兆円以上の税収増になる。

だが、消費は一向に強さを取り戻していない現状のまま、消費増税に踏み切れば、一段と消費が冷え込む可能性もある。来年10月までにオリンピックを控えて消費が大きく伸びてくれば、増税の影響を吸収できるかもしれないが、現状では五分五分といったところか。

いずれにせよ、本気で国の借金を返す姿勢が見えない中で、国民に負担増を求めるのは無理がある。消費増税再延期の議論が再燃してくることになりそうだ。