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中国・李克強首相が初来日で日本に求めたこと「全文公開」

日中首脳会談110分を読み解く
近藤 大介 プロフィール

「継続的な外交」を謳い3選へ

まず、首脳間往来が復活したことは、日中間でヒト・モノ・カネ・情報が動く原動力となるものであり、吉報だ。

安倍首相としては、何としても9月の自民党総裁選の前に訪中したいところだろう。そして訪中した際に、習近平主席の訪日時期を確定させて、「継続的な外交」を両国で謳った上で、自らの3選に結びつけようという戦略だ。

逆に中国からすれば、もしもこの流れに乗ったなら、いまの安倍政権の方が他の新政権に代わるよりも組みやすしと判断したということだろう。

少子高齢化問題については、前述の通りで、いま中国が日本に最も協力してほしい分野だ。また、社会保障に関する協定が結ばれたことで、中国に拠点を構える3万社の日本企業にとって、安定したビジネス活動が行えるようになった。

2000億元の人民元適格外国機関投資家(RQFII)枠に関しては、日本の一部メディアはすごいことのように報道していたが、実は日本は20ヵ国・地域目にすぎない(そうかといって吉報に変わりはないが)。

中国は2011年12月に、香港に対して200億元分賦与したのに続き、台湾、シンガポール、イギリス、フランス、韓国、ドイツ、カタール、カナダ、オーストラリア、スイス、ルクセンブルク、チリ、ハンガリー、マレーシア、タイ、UAE、アメリカ、アイルランドに、それぞれ賦与してきた。これだけの国に賦与していて、なぜいままで日本はダメだったのかという話なのだ。

これに加えて今後、通貨スワップ協定の締結、人民元クリアリング銀行の設置という「3点セット」が揃って初めて、人民元ビジネスの拡大につながると言える。

ちなみに中国人民銀行は現在、35ヵ国・地域の中央銀行・通貨当局との間で3.1兆元の通貨スワップ協定を締結している。域外の人民元クリアリング銀行は、25ヵ国・地域で指定されている。これらも日本は、アジアの2大経済大国なのに、遅いくらいだ(注:この項に関するデータは、5月10日付の大和総研レポート『日中金融協力が進展、人民元ビジネス拡大へ』から引用しました)

 

2011年の福島原発問題に伴う禁輸措置は、いまだに福島、宮城、茨城、栃木、新潟、長野、群馬、東京、埼玉、千葉の10都県に及んでいる。特に日本米と日本酒は、いま中国で空前のブームであり、日本としては一刻も早く解禁してもらいたいところだ。中国は今年11月に上海で「国際輸入博覧会」を予定しているが、安倍首相が訪中した時に解禁して、花を持たせるのではないか。

RCEPは、ASEAN10ヵ国+日中韓+豪西印の16ヵ国の自由貿易の枠組みで、アメリカが加わっていないところがポイントだ。これまで中国が積極的で、TPPを優先する日本は、どちらかというと消極的だった。だが、あのトランプ政権が長期化するようだったら、早期の締結に向けて本腰を挙げるのも手だろう。

犯罪人引き渡し条約も、これだけ日中間の人の往来が多くなってきているのだから、早急に結ぶべきである。現状で日本は、アメリカと韓国の2ヵ国としか結んでいないのだから、お寒い限りだ。

東シナ海を「平和・協力・友好の海」にすると確認したこと、及び東シナ海資源開発に関する「2008年合意」について、その完全な堅持を確認した意味は大きい。2008年5月に胡錦濤主席が来日した際に合意し、翌月には実務レベル協議まで始めたが、その後中国は、「そんな合意はしていない」として、勝手に資源開発を始めたのだ。

日本からすれば、中国は約束違反だという話だ。ただ今回も、「実施のための協議の再開を目指して意思疎通を一層強化する」と、大変まどろっこしい表現になっているところが気になる。

日中防衛当局間の海空連絡メカニズムが、10年に及ぶ協議を経て妥結した意義は、大変大きい。これは両国の艦船や航空機が接近した際に、連絡を取り合うルールを作ったということだ。運用は、6月8日から始まる。

2013年の年初に、中国の艦船が海上自衛隊の護衛艦に、火器管制レーダーを照射した事件が起こった時は、すわ日中開戦かと思ったものだ。その時も小野寺五典防衛大臣だったが、血相を変えた会見が忘れられない。

ただ中国は、南シナ海に関する日中間の取り決めについては、話し合いさえ拒否している。日本は南シナ海問題の当事者ではないというのが、中国の一貫した立場だからだ。

日中の佐官級交流が、6年ぶりに再開したことについては、4月17日に都内で行われた歓迎レセプションに、私も行ってきた。25人の訪問団を代表して慈国巍少将が挨拶したが、「中日友好」を繰り返し述べていたのが、気味悪いほどだった。

社会主義国というのは、やはりトップの方針が変われば下まで一斉に変わるもので、安倍首相と習近平主席の関係が重要だと再認識した次第である。