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中国・李克強首相が初来日で日本に求めたこと「全文公開」

日中首脳会談110分を読み解く
近藤 大介 プロフィール

次に北朝鮮問題については、4月27日に行われた南北首脳会談で文在寅大統領と金正恩委員長が署名した「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言文」を評価し、歓迎するという共同声明を発表した。

また、朝鮮半島の非核化に関しては、日本が望んでいた「CVID」(完全で検証可能、かつ不可逆的な解体)は、中国と韓国の強硬な反対に遭って明記できなかった。

その代わり、日本が強く求めた「拉致問題の早期解決」は入れ込んだ。共同宣言の発表が深夜までもつれ込んだ原因の一つは、この部分の表記を巡って、3ヵ国が激しい攻防を繰り広げたからではなかろうか。主催国の日本からすれば、「拉致」をゴリ押しして「非核化」を引いた格好になった。

おしまいに、東アジア経済共同体(EAEC)は、1990年に当時のマハティール首相が提唱したものだが、いまや絵に描いた餅のようになってしまっている。だが提唱者のマハティール氏は、92歳にしてマレーシア首相に返り咲いた。EAECの推進も、再度提起するかもしれない。

 

「安倍総理には、年内に訪中してほしい」

続いて、夕刻に開かれた日中首脳会談について見ていきたい。

午前中の日中韓サミットが75分だったのに対し、こちらは110分と、きっちりと実質協議を行った感がある。

参加者は、日本側が安倍首相以下、河野太郎外務大臣、世耕弘成経産大臣、西村康稔官房副長官、野上浩太郎官房副長官、谷内正太郎国家安全保障局長、横井裕駐中国大使ほか。中国側は、李克強首相以下、王毅国務委員兼外交部長、何立峰国家発展改革委員会主任、鐘山商務部長、程永華駐日大使ほかである。

〔PHOTO〕gettyimages

両首脳の主な発言は、以下の通りだ。

安倍首相:「3月の再任後、初の外遊先に日本を選んでくれたことに対し、謝意を申し上げる。今年は、日中平和友好条約締結40周年にあたり、『戦略的互恵関係』の下、全面的な関係改善を進め、日中関係を新たな段階に押し上げていきたい。

李総理の訪日を第一歩として、今後、自分の年内訪中、そして、習近平国家主席の訪日と着実にハイレベル往来を積み重ねていきたい。特に首脳同士の信頼関係の構築が重要だ。

本年は、中国の改革開放40周年でもあり、日本の対中投資は1兆円、中国における日本企業の拠点数は3万を超え、中国の雇用創出にも大きく貢献している。また、中国の最近の金融市場の対外開放措置を歓迎するとともに、金融協力の実現に向けた大きな進展に期待したい。

貿易に関しては、これからも、ともに自由貿易を保護していきたい。中国が進めている『一帯一路』に関しては、開放性、透明性、経済性、財政健全性などの国際スタンダードが確保されることを踏まえた上で、個別案件ごとに協力の可能性を検討していきたい。

文化面でも、今般の日中映画共同製作協定への署名や、本年4月に日中文化交流政府間協議が、9年ぶりに再開したことは喜ばしいことだ。

また、今後は防災分野での協力も進めていきたい。2008年の四川大地震の際には日本が支援し、2011年の東日本大震災の際には、逆に中国が支援してくれた。

北朝鮮については、先週(5月4日)、習近平国家主席との間で初の電話会談を行い、率直かつ有意義な意見交換を行うことができた。最近の北朝鮮の動きは、日米や中国が国際社会と連携して北朝鮮に圧力をかけてきた成果であり、今週(5月7日~8日)の金正恩委員長による訪中も含め、中国の努力を評価したい。

北朝鮮による、すべての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全、検証可能、かつ、不可逆的な方法での廃棄を実現するよう、日中で連携していくことが重要である。国連安保理決議の完全な履行は、引き続き日本の立場だ。

(2002年に小泉純一郎首相と金正日総書記が締結した)日朝平壌宣言に基づき、拉致、核・ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、国交正常化を目指すとの考えに変わりはない。拉致問題の早期解決に向け、中国にも協力してほしい」

李克強首相:「今回は総理就任後初めての訪日であり、訪日招請に感謝したい。中日関係は、ここ数年、風雨を経て曲がり道をたどったが、本日の歓迎式典に参加し、風雲は過ぎ去り晴れた空となった。今後、新たな発展を得て、長期にわたる安定した健全な発展を目指すべきだ。中日両国は、世界の主要な経済体として、重要な責任を有している。

安倍総理に、年内に訪中してほしいし、その後の習近平国家主席の訪日と、着実にハイレベル往来を積み重ねていきたい。両国親善の象徴として、中国から日本に対して新たなトキ2羽の供与を行いたい。

日本に対して2000億元(約3.4兆円)の人民元適格外国機関投資家(RQFII)枠を付与する。また、日系金融機関への債券業務ライセンスの付与及び中国市場参入について、法令に基づき早期に進めていく」