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ついに新興国通貨危機が始まった!~アルゼンチンで金利40%の衝撃

10年に1度、今回はアジアではないが
宿輪 純一 プロフィール

発火点は今度も米国

米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB:Federal Reserve Board)は、イエレン元議長在任の2015年12月から金利を上げ続けている。米国も含めた先進国は、景気目標よりも、インフレ率(消費者物価指数)2%を共通目標として重視している(共通目標である必要があるのか疑問がある)。

米国はすでにその目標の2%を超えているのである。そのため、FRBは金利を下げることは“できない”のである。逆に2%を超えているので、大義名分として、上げ続けなければならないのである。

8日のスイスにおける講演でパウエル議長は、米利上げ巡り「影響は軽微」と沈静化に躍起となった。ある意味、イエレン元議長はいい時期にやめることが出来たということかもしれない。  

米国の政策金利であるフェデラルファンド翌日物(FF O/N)金利の誘導目標は1.50%~1.75%であるが、10年物国債の利回り(長期金利)は3%を超えて上昇している。

アルゼンチンの政策金利(7日物レポ金利)が“40%”に引き上げたのは、もはや合理的な金利差というよりは、すでにリスク回避のパニック的な動きといっていい。

この金利計算には計算式がある。米国の政策金利とアルゼンチンの政策金利の差は約38.5%(約4割)となっている。これは1年間でアルゼンチンペソが約4割減価すると金融市場が落ちるとみていることから、逆算しているのである。

当然、減価がさらに進むと市場が考え出したら、それに対応するためにアルゼンチンはさらに政策金利を引き上げざるを得ない。

 

リスクはどこで高まっている

筆者は、長年、国際金融、特に通貨を実務で担当し、また研究してきた。弊書『通貨経済学入門(第2版)』(日本経済新聞出版社)にも書いたが、為替(通貨)相場は「金利差」と「リスク」で決まると考えている。

今回の新興国で資金流出して問題になっているのは、アルゼンチン、トルコ、南アフリカ、インド、メキシコ、ブラジル等である。

米国が金利を上げることがあっても、下げることができないだけに、この危機の流れを止められなくなっている。

今回、市場はすでにアジア通貨危機型の「新興国通貨危機」を予想し始めている。そのため、市場全体の「リスク」が高まり、「低リスク通貨」の円が買われているのである。

通常、ドル金利の上昇時には、ドル高円安となるはずであるが、その動きが弱く逆に円高に行っているのはそのためである。すでに、先に挙げた国以外の新興国、たとえばオーストラリアなどに対しても円高が進行している。

このような通貨危機の時は、通常、IMFに融資(資金援助)を依頼する。今回も8日にアルゼンチンが300億ドル(約3兆円)の融資を依頼した。

ちなみにこの金額は最近、大型M&Aで話題になった武田薬品工業が、3メガバンクへ融資を依頼した資金とほぼ同額というのも皮肉な偶然か。