北朝鮮

米朝会談が6月12日に設定された「重大な意味」を読み解く

こんなサプライズがあるかもしれない
髙橋 洋一 プロフィール

金正恩の明らかな焦り

長期的には、アメリカは中東への介入から徐々に手を引いていくだろう。アメリカはすでにシェール生産によりエネルギー輸出国となっている。この意味でエネルギー情勢を左右する中東は、アメリカの安全保障上の意味合いでは(イスラエルは別にすると)以前から低下している。

短期的には、アメリカがイラン核合意から離脱しても、イランは対欧州との関係で残留せざるを得ないことをトランプ大統領は見越していたはずだ。欧州も対イラン投資などで簡単に抜けることができない。であれば、欧州とイランが当面核合意を維持して、それらに委ねた方がアメリカの国益になる、とトランプ大統領は考えたのだろう。

さらに重要なことであるが、米朝首脳会談を控え、アメリカは北朝鮮に対して、恒久的・検証可能・不可逆的な非核化を求めている。イラン核合意は、そのような厳格な非核化に比べればかなり生ぬるいものにみえる。

 

何しろ核開発に制限をかけてはいるが、核そのものを禁止しているわけでないからだ。イラン核合意は外交手段としては成功例であるが、軍事オプションを考えると「最適解」とはいえないのだ。

トランプ大統領は、北朝鮮の段階的非核化について軍事オプションを使って牽制するためにも、イラン核合意で強気で押し通したのだろう。

この動きは、水面下でアメリカと協議中の北朝鮮も当然わかっていたはずだ。7,8日に金正恩氏は中国の大連で中国習近平主席と首脳会談を行った。3月の北京での中朝首脳会談に続いての異例な会談だ。

通常首脳会談は交互に訪問するので、習近平主席が北朝鮮を訪問する番であるが、おそらく金正恩氏の都合なのだろうか、再び金正恩氏が訪中した。しかも、通常は列車であるが、飛行機で大連まで行ったという。

金正恩氏は、軍事オプションをもちらつかせるトランプ大統領の「恒久的・検証可能・不可逆的な非核化」への態度にかなり焦っているのではないか。発表された中朝首脳会談の写真では、金正恩氏の表情の硬さがうかがえる。連日北朝鮮の労働党機関誌において、圧力をかけるなと日米を非難しているのも、その表れだろう。

金正恩氏は、段階的な非核化について習近平主席が支持してくれることを再び確認したかったのだろう。習近平主席も、中国が北朝鮮の後ろ盾になって、アメリカとの仲介を果たすことは、中国の国益になると考えている。