地震・原発・災害

「原発事故はやっぱり防げた」地震学者の決死の法廷証言を聞け

明らかに人災、とまで断言
町田 徹 プロフィール

事業者失格では

そうした状況にもかかわらず、政府と東電は相変わらず事故に対する反省が乏しく、今なお、次々と間違った政策や誤った経営判断を積み重ねており、懸念せずにはいられない。

そもそも、東電は2011年3月の段階で、甘い判断から巨大津波への対応を怠った結果、世界最悪レベルの原子力事故を起こし、巨額の損害賠償責任を背負い込んで、経営破たんが避けられなかった企業だ。

政府がそんな企業をあえて国有化という形で救済して生き永らえさせてきたことは、経済と資本主義の原理に反する行為だ。

経済産業省の試算で最大21.5兆円、民間シンクタンク「日本経済研究センター」の試算で最大70兆円という巨額の事故処理費用の大半を国民にツケ回す政策判断も無茶苦茶だ。

さらに、東電に対する巨額の公的資金の注入が続いているにもかかわらず、並行して電力自由化を進め、国営企業の東電がライバルから顧客や収益を奪うことを政府・経済産業省が奨励していることや、その意向に従って東電が競争に参加していることは、政策的にも経営的にも、自由競争と市場メカニズムの機能を損ねる行為である。

 

もう一つ懸念すべきは、近い将来、東電が原子力事業者として復活しようとしていることだ。

島崎名誉教授の退任から約2年半後、古巣の原子力規制委員会が2017年秋に下した判断も、首を傾げざるを得ない。同委員会の役割を技術面の審査に限定してきた従来の姿勢を突然かなぐり捨てて、東電が同社の保安規程に「『安全文化を向上させる』という文言さえ書き込めば、原子力事業者としての適格性が保てる」という判断を打ち出し、同委員会として柏崎刈羽原子力発電所(6・7号機)の再稼働にお墨付きを与えたからである。

本来、原子力事業者の適格性というのは、その電力会社の経営が信頼に足るか、企業としてのガバナンスが効いているかなどを含めて総合的に判断すべき問題だけに、この決定には不透明感が付き纏った。

そもそも、最悪の原子力事故を引き起こしたのだから、本来ならば、事業者としての責任を問い、その資格をはく奪すべきところだろう。原子力規制委員会はそれまで権限外としていたにもかかわらず、そうした東電の責任も一切不問に付したのである。

この乱暴な決定の影響の持つ意味は大きく、東電による柏崎刈羽原発の運転再開に待ったをかけられる存在は、立地自治体の新潟県だけになってしまった。

ところが、遺された砦とでも言うべき新潟県では、泉田裕彦元知事の路線を引き継いで「再稼働より事故の検証が先だ」と言っていた米山隆一前知事が女性問題で辞任した。次の知事になる人物の考え方次第で再稼働が大きく進みかねない状況になっている。

万全の安全対策を前提に、巨額の設備投資をしてきた柏崎刈羽原発を有効利用したいという議論は理解できなくはない。しかし、東電は原子力事業者失格の会社だ。その東電が運転するのでは、必要な安全対策が講じられたと言えるのかに重大な疑義が生じて来る。

新潟県知事選は6月10日に投開票される予定だが、次の知事には「東電による柏崎刈羽原発の運転再開は断じて認めない。売却でもして、他事業者が運転する形にしたうえで、万全な安全対策を講じなければ、絶対に駄目だ」と主張するような人物が求められているのではないだろうか。