地震・原発・災害

「原発事故はやっぱり防げた」地震学者の決死の法廷証言を聞け

明らかに人災、とまで断言
町田 徹 プロフィール

二つの大きな争点

裁判では、①巨大津波の襲来を予測できたか(予見可能性)、②有効な対策は可能だったか(結果回避可能性)――の二点が大きな争点となっていた。

島崎名誉教授は原子力規制委員会の委員長代理を務めた人物だ。あの事故の9年前、地震学者として政府の「地震調査研究推進本部」の部会長を務め、福島県沖を含む三陸沖から房総沖にかけて、30年以内に20%の確率で巨大地震が発生するという「長期評価」を公表しており、5月9日の公判に証人として出廷した。

ちなみに、この長期評価は、あの震災の3年前に15.7メートルの津波が押し寄せる可能性があるという試算を東電自身がまとめることになった原資料だ。

今回の島崎証言のポイントは、被告の元会長ら3人が「『長期評価』には専門家の間で異論があった」として「津波は予測できなかった」と主張していることに対し、「当時、部会の専門家の間で、信頼性を否定するような議論はなかった」と反論したことだ。

 

さらに、国の中央防災会議で、「長期評価」を災害対策に生かすよう求めたにもかかわらず反映されなかったと証言、当時の国の怠慢ぶりを指摘した。そのうえで「『長期評価』に基づいて、「(国や東電が)対策をとっていれば、原発事故は起きなかった」と結論付けたのだ。

原子力発電は本来極めて危険な技術で、一歩間違えば大惨事を招くことは、福島第1原発事故でも浮き彫りになっている。

また、「長期評価」とそれに端を発する各種の試算の存在や、東電がそれらの試算に基づいて当然講じるべきだった安全対策を怠ってきた問題は、国会事故調や政府事故調の報告書に先立つ2012年6月出版の『東電国有化の罠』と、その後の2014年2月に出した『電力と震災』で、筆者も指摘し続けてきた。今だに東電のガバナンスやリスク対応能力が極めて低いことは、大きな問題だ。

あの震災で福島第一原発より震源に近く、福島第一原発を襲ったものに匹敵する地震と津波に遭遇しながら、ボヤ程度の事故しか起こさず、ピーク時には周辺住民364人の避難所になった原発(東北電力女川原発)の安全対策や事故対応と比べでも、東電の原子力事業者としての劣後は明らかだろう。東電は原子力事業者として失格である。このレベルの会社には、二度と原発を運転させてはならないはずだ。

間接的な表現とはいえ、今回の島崎証言も、その事実を示唆したものと言える。