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企業・経営 週刊現代

武田薬品「7兆円買収」外国人社長だからできる大バクチの勝算

なんだか怖い…!

自社の時価総額の2倍近いカネを使って他社を買う――。230年以上の歴史を持つ名門企業が、ビジネスの世界ではほとんど見ることのない「勝負」に出た。そのやむにやまれぬ決断の裏側に迫る!

急転直下の買収劇

東京・日本橋に、今年3月に竣工したばかりの24階建てのビルがそびえ立っている。エントランスは広々として、木を用いた温かみのある壁のあしらいが美しい。

武田薬品工業が新築した「武田グローバル本社」である。

今年7月にオープンするこのビルは、地下1~地上2階にショップや飲食店が入り、その上階を武田がオフィスとして使う予定だ。目の前には、樹木が植えられた休憩スペースやカフェが並ぶ。

グーグルなどアメリカのグローバル企業は、社員の福利厚生のため、敷地内に飲食店や緑を充実させる。武田もそうした「グローバルスタンダード」を意識していることが、ビル名からも施設の中身からも明らかだ。

グローバル展開に向け、「社屋」に関しては準備万端の武田。しかし、その新社屋から1kmほど離れた、同じく日本橋にある現在の東京本社では、「グローバル化」について、社員の間に緊張が走っている。

「今回の買収話には、恐怖に近い思いを抱いています。本当に武田という会社が生き残ることができるのかという思いです」(中堅社員)

 

こうした不安を複数の社員が滲ませている。不安の源泉は、業界を揺るがす買収騒ぎ、すなわち、武田によるアイルランドの製薬会社・シャイアーの「7兆円買収」にほかならない。

急展開だった。

3月末、「シャイアー買収」の憶測が市場を駆け巡ると、武田は〈何らかの提案を行うことを検討していることは事実ですが、その検討はごく初期かつ調査段階〉であると発表。しかし、「調査段階」の言を翻すように、交渉は一気に進展する。

4月に入ると、武田は複数回にわたり、矢継ぎ早にシャイアーに対して価格提案を行った。交渉の過程でシャイアーから値を釣り上げられたが、武田の外国人社長(兼CEO)クリストフ・ウェバー氏は止まらなかった。

「ウェバー社長本人が買収に前向きで、積極的に進めているそうです」(武田OB)

トップダウンと言えばその通りだが、周囲の戸惑いをよそに買収に向けて突き進む様は、「この買収は間違いではない。必ずうまくいくはずだ」と自分自身に言い聞かせているようにも映る。

買収が成立すると、武田は売上高で世界9位となり、形の上では、「グローバル企業」へと脱皮する。

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