メディアが放つ印象操作「サメは人を襲う」は疑ったほうがいい

もしウソだと思ったら…それは洗脳です

「サメは4億年前から生息していた」「赤ちゃんを産むサメがいる」「全長約10cm、手のひらサイズのかわいいサメ」――シャークジャーナリストの沼口麻子さんが、世界各国のサメ追いかけ、体当たりでレポートした体験談を図鑑とともにまとめた、その名もズバリ『ほぼ命がけサメ図鑑』が上梓された。

「人食いザメなんて存在しない」ときっぱり言い切る沼口氏が、知っているようで知らないサメの真実を、自身の活動とともに伝えます。

一言では語れないっ!!

初めて水中で自分より大きな生物と出会ったのは、小笠原諸島父島でのこと。

大学の必修授業の乗船実習中に許されたわずかな上陸時間を使って、わたしは生まれて初めて父島でスキューバダイビングをした。あいにく天気も悪く、水も濁っていたが、幸運にもそれに出会うことができた。

水中の海底洞窟からゆったりと泳いで現れたのは全長2・5mほどのシロワニというサメ。目の前に泳いできたとき、その美しさと力強さと神々しさに吸い込まれ、サメの体についつい触りそうになってしまったが(手を伸ばせば触れそうなくらい近くだった)、ダイビングガイドさんに止められた。

サメはそんなわたしのことを見ているのか見ていないのか、終始、変わらないゆっくりした泳ぎで、洞窟のまわりを旋回していた。

シロワニ(Photo by Jeff Kubina from Columbia, Maryland)

シロワニは尖った歯が口から漏れ出ているのが特徴の、少し強面のサメだが、性格は温厚で、少なくとも日本では人を襲ったという事例はない安全なサメである。水中で強く思った。このサメについてもっともっと知りたいと。

わたしの肩書きは「シャークジャーナリスト」。シャークとはサメのこと。世界で唯一、サメだけに特化した情報発信を生業にしている。

大学と大学院ではサメの生態を研究し、現在は、愛するサメを追い求めて世界中を旅しながら取材を行い、テレビ番組でサメの解説をしたり、専門学校でサメの講義をしたりしている。

サメの専門家というと、大学の教授とか、研究所に所属する研究員とかだったりするのだが、わたしはどこにも所属していないフリーランス。もちろん、サメを漁獲するような漁業関係者でもなければ、サメの保護を過剰に訴える動物愛護団体職員でもない。

あくまで中立な立場で、サメに触れ合い、世の中にあまり知られていないサメの魅力を少しでも多くの人に知ってもらうために活動している。

まあ、一言でいうと、サメが大好きなので人生の中でサメに関すること以外をいっさい排除して、サメを毎日追いかけているサメ好き人間という紹介の方がわかりやすいかもしれない。

なぜ、わたしがこの仕事をしているかというと、それはサメが大好きだからということなのだけど、もうひとつ理由がある。それは世の中がサメに対する誤解や偏見で溢れているから。

 

本来ならばサメという生き物は一言では語ることができない。

なぜなら人類よりもずっと先輩で、この地球に4億年前からすみつづけており、世界中に500種類以上も存在するのだ。全長17mの「最大の魚類」ジンベエザメから、手のひらサイズのツラナガコビトザメまで、卵を産むサメから、胎盤を作って子どもを産む胎生のサメまで、多様性に富む。

もし、わたしが「人食いザメはこの世に存在しない」といったら、どうだろう。

これからわたしは真実をあなたにお伝えするので、よく聞いてほしい。少し衝撃的な内容かもしれない。

そう、あなたが今、頭に思い描いている人食いザメは、メディアが作り上げた偶像で、今の今まであなたはまんまとそれに洗脳されてきた。つまり今流行の言葉でいえば、フェイクニュース。