Photo by iStock

鎮痛薬を飲むと、むしろ悪化する片頭痛があるのをご存知ですか

「薬物乱用頭痛」の恐ろしさ
片頭痛持ちの読者の中には、大切な仕事の前などに予防のために鎮痛薬や医者で処方されたクスリを飲んでいる人も多いのではないでしょうか。これ実はとても危ないことなんだそうです。『「片頭痛」からの卒業』(講談社現代新書)を上梓した、片頭痛研究40年の医師・坂井文彦氏が警告します

私は、40年にわたりおそらく10万人以上の頭痛に悩む方々の治療を行ってきました。今も日本初の頭痛センターや専門クリニックで日々患者さんとお話ししています。

最近、「慢性片頭痛」の患者さんが目立つようになってきました。片頭痛の定義は、週に2回から月に2回程度の頻度で繰り返し起こり、ズキンズキンと脈打つ痛みが4時間から長いと72時間続くというものです。

この片頭痛の頻度が増したり、片頭痛のない日も頭が重くてスッキリしない日が続くことに悩む、片頭痛が慢性化してしまった患者さんが増えているのです。

「慢性片頭痛」の症状を訴える患者さんの中には、頭痛薬の間違えた飲み方をしている、あるいはわかっていても間違えた飲み方をせざるを得ない人がたくさんいます。

クスリの飲み方に気を遣うだけでも、かなり「片頭痛」の症状は変わります。本稿ではそのあたりを明らかにしていきましょう。

 

クスリの飲み過ぎで慢性片頭痛に

クスリは両刃の剣と言われています。上手に使うコツを知らないと、一方では有益でも、他方で自分自身に害の及ぶことがあります。

最初に私の病院にきたFさんのケースを紹介しましょう。対処法を間違えて、片頭痛が薬物乱用頭痛になり、また慢性片頭痛へと変貌した典型的な患者さんです。

Fさんは42歳女性。数年前から自分のカレンダー型手帳に頭痛のしるしを付けていました。3年前の1月から2月にかけての記録を見ると、月に1~2回しか起きないはずの片頭痛がほぼ毎日のように起きているのがわかりました。頭痛がなかったのは、ひと月でわずか7日だけ。その頃から片頭痛が慢性片頭痛に悪化したのです。

「それまでの対処が愚かだったなって思います」

と、Fさんは述懐します。

Fさんが初めて頭痛を感じたのは、小学校6年生のとき。母親も頭痛持ちで「それ片頭痛よ」と言われて、遺伝だから仕方ないと受け入れていたとのことです。

そんな彼女の頭痛に変化が現れたのは、短大を卒業して、地元の企業に就職した頃でした。学生の頃には感じたことのない緊張感と責任感。仕事のプレッシャーは大きくなっていきました。

そんなFさんが、朝、目を覚ますと、しばらく忘れていた片頭痛が起こり始めたのです。そこで彼女は慣れた手つきで、いつもの痛みどめの頭痛薬を1錠飲みました。

しかし、「もし、会社でまた痛くなったらどうしよう」と、念のためもう1錠飲むことにし、「これで仕事にも差しさわりはないはず」と考えていました。

とにかく「頭痛で仕事の効率が落ちるのを周りに知られたくない、弱い自分を同僚に見せたくない」という思いから、症状が出る前から予防としてクスリを飲むようになりました。彼女にとっては苦肉の策でした。

しばらくは、仕事をしている最中に頭痛が気にならなくなっていました。「頭痛はこれで何とかなりそうだ」と、頭痛を紛らわすために許容量より多くのクスリを飲んで仕事をすることが増えていったのです。間違った対処法とは薄々感じていたそうです。

Photo by iStock

半年後に、朝の頭痛の回数が急に増えてきました。月に7~8回と頻度が増してきたのです。おまけにいつものクスリが、以前より効きが悪くなった気がしました。困った彼女がある日会社を早退し、帰り道に寄ったのは、病院ではなく、大手の薬局でした。

「頭痛の鎮痛剤ってこんなにいっぱいあるんだ」と感心したFさんは、飲んでいるクスリの鎮痛効果がなくなると、また別の市販薬に頼るという、「クスリ・ショッピング」を始めたのです。

4年後、結婚して最初の子供ができた26歳のころから、Fさんは今までに感じたことのないような激しい頭痛に悩まされるようになったのです。このとき彼女は、その痛みこそが薬物乱用頭痛が慢性片頭痛へと変貌したサインとは知りませんでした。

MRI検査は異常なしと言われ、「この頭痛とは一生付き合っていくしかない」、そう覚悟を決めたそうです。