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男性は要注意…?最も歯周病になりやすい職業とは

糖尿病や心筋梗塞との関連も

知らず知らずのうちに忍び寄る歯周病。人類史上最も感染者数の多い感染症として、2001年のギネス世界記録にも認定されています。そこには「地球上を見渡しても、この病気に冒されていない人間は数えるほどしかいない」とまで……。

日本人では30歳以上の約7割が歯周病と言われる中、歯周病の発症リスクが職種によって異なることが報告されています。残念ながら、最も歯周病の発症リスクが高かった職業とは──。

なぜ歯周病がこわいのか

厚生労働省による最新の歯科疾患実態調査によると、日本人では30歳代の65%、60歳代の75%が歯周病、もしくはその予備軍であり(※)、歯周病はむし歯と並び歯を失う主要因となっています。

歯周病は「サイレントディジーズ」「サイレントキラー」とも称され、はじめのうちは痛みなどもなく進行し、歯茎からの出血、歯のぐらつきといった自覚症状が現れたときにはすでに時遅し。歯科医による治療が必要なレベルに達していることも。

近年では、糖尿病などの全身性疾患や、早産との関連も指摘され、もはや「口の中のこと」として片づけられなくなっています。

 

日本では平成元年から「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という8020(ハチマルニイマル)運動が推進されていますが、残歯数と健康寿命には大きな関係があると考えられています。

歯の数が減ると、次第に噛むことが困難になり、食事・会話を楽しむことや、十分な栄養を摂ることができなくなります。低栄養により運動機能が低下すると、高齢者の場合は、健康状態と要介護状態の中間である「フレイル」となり、やがて寝たきりの状態が続くことで死が早まる、という負の連鎖が待ち受けているのです。

平成28年歯科疾患実態調査http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/62-28.html)の結果をもとに筆者算出

高齢者 健康トラブル イメージ口腔のトラブルが全身に波及することも photo by iStock

糖尿病や心筋梗塞との関連も

そもそも歯周病とは、どんな病気なのでしょうか。歯周病は、歯茎に炎症が起こる「歯肉炎」と、歯を支える歯槽骨がむしばまれてしまう「歯周炎」に大別されます。

一般的に、歯肉炎は痛みを伴わないため、自覚症状が現れるのは「歯周炎」が進んだ段階になります。歯と歯茎の境目には、通常1〜2ミリの溝がありますが、この部分が4ミリ以上の「歯周ポケット」となっているかが、ひとつの目安とされています。

健康歯・歯肉・歯周炎
左から健康な歯肉、歯肉炎、歯周炎の状態を示す。歯肉炎では歯茎に炎症がみられるものの、歯の根を支える歯槽骨はむしばまれていない。しかし、歯周炎になると骨が溶け始め、やがて歯が抜けてしまう

口腔内には約700種類、 数千億もの微生物が存在しています。そのすべてが悪さをするわけではありませんが、菌に感染しない方が難しい環境です。歯周病は、歯周病原菌と総称される細菌に感染することがひとつの引き金となります。よく耳にする「歯垢(プラーク)」は、歯周病原菌を含む細菌の塊や、菌の代謝物が歯の上に付着したものです。

毎日の歯磨きで歯と歯茎の境目の歯垢がしっかり落とせていないと、私たちの体は防御機構として免疫システムを発動させ、侵入者である細菌を殺そうと戦います。その結果、炎症反応が起こります(主に侵入者を区別しない非特異的な攻撃、自然免疫の段階です)。この炎症が歯茎に限定的であれば、まだ歯肉炎のステージです。

しかし、病原菌にさらされた状態が続くと、免疫システムはさらなる対応に迫られます(侵入した細菌に特異的な攻撃、獲得免疫の段階に移行していきます)。

体は自分の身を削ってでも、細菌を退治しようとします。歯茎の細胞を減らして、歯茎が下がったようになり、免疫システムは最終的に「破骨細胞」を増加させ、歯を支える歯槽骨を溶かします。トカゲがしっぽを切るように、感染された部位を捨ててしまおうという切羽詰まった状況です。このような組織破壊を伴うようになるのが歯周炎のステージです。

歯周病との関連性が指摘されている疾患としては、糖尿病、心筋梗塞などの心血管疾患、関節リウマチなどの慢性炎症疾患が挙げられます。歯周病がこれらの疾患にどう悪影響を及ぼすのか、逆に、全身性の慢性炎症疾患が歯周病を増悪させるのか? その因果関係はまだ完全には解明されていませんが、口の中から全身へと波及する理由として、

  1. 歯茎が出血すると、そこから細菌や、菌がばらまく毒素が血管内に入り込み、血液を介して全身に広がる
  2. 炎症反応が起こると、炎症性メディエーターと呼ばれる物質が体内で生産されるため、それが全身にも影響を及ぼす

といった経路が考えられています。

血流のイメージ血流を介して全身へ悪影響が及ぶと考えられている photo by iStock