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Amazon、TSUTAYAに負けない「賑やかな」図書館の可能性

「高価な貸本屋」のままでは未来がない
伊藤 麻理 プロフィール

今回の件でいえば、地域住民の希望を叶えるスペースや必要機器は建設費外にかかる出費で、自治体はその費用を事前に想定していません。そこで先に民間から融資を募り、自治体にその民間投資が評価してもらえるように、活動が成果を上げられる可能性をきちんと伝えるのです。

たとえば、図書館で地域の高齢者に健康に関する正しい知識を伝える場を提供すれば、将来的に地域の医療費がどれくらい下がると数値で提案します。

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仮に10億円下がれば、初期投資に1億円がかかったとしても正当性が生まれるのです。もちろん実際に成果が上がれば、民間にリターンされます。

この社会問題解決プログラムは、2010年にイギリスで生まれたもので、主に医療費削減計画に導入されています。

日本では、2017年に東京・八王子市で、大腸がん検診受診率向上のために株式会社キャンサースキャンが実施されました。そして、今回の導入が認められれば、SIBが図書館に適用される世界初の事例となります。

子育てママがスキルを図書館で学び、オンラインで副業できれば、所得税が上がって地域の財政も自ずと向上します。

これって那須塩原市で育って、地元の図書館で受験勉強をした私が、何十年後に地元に公共施設を建てて恩返しをするのと同じ流れなんですよね。

100年を見越した「人づくり」図書館

建築物をつくることはあくまでも通過点でしかありません。次世代の建築とは建てて終わりではなく、建物を利用してどのようなことを街に還元できるのかまで考えを発展させていくべきです。公共施設ほど、「何をしたいか」コンセプトから建築を考えていく必要があります。

那須塩原市駅前図書館を通じて、私は人づくりをしたいと考えています。街を活性化させるには人と街づくりをするための知識や技術が必要です。人口の多い都市では専門業者に頼ることはできますが、人口の少ない街こそ住民同士で教え合って、助け合っていかなければいけません。

その土壌をつくるためにも、100年を見越した公共施設を建て、3、4世代に渡って学びをシェアできるように、地元住民と関わっていきたいのです。こんな風に考えることができたのも、私が那須塩原市出身で、育ててくれた街に恩返しをしたかったからかもしれませんね。

個性ある街づくりは、地元の人々から想いを発信できる地方都市だからこそやるべきだと考えています。他県の人がその地域の歴史も知らずに建物を作り直した挙句、日本中同じ景色が臨めてしまう未来はどうでしょうか。地方都市が消滅する可能性さえ拭えません。

日本は戦後に更地からスタートしている分、ボロボロになったら都度作り直せばよいという考え方が根強いのですが、今後は消費するだけではなく、街が醸成していくようなシステムをつくることが必要になってきます。つまり、未来の同郷の人が利用することを念頭に置くべきでしょう。

しかし、小規模で広く活動をするとまとまりにくいもの。だからこそ、コアとなる場所が大事になります。図書館は、地元の市民活動を活性化させるコア施設になっていくことが、正しいと考えています。

街づくりのために、シビックプライド、自分の街に対するプライドをもって、血筋をつくって後世につなげていくために。私は建築を通じて人づくりを助けたいのです。