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「サウジ対イラン」覇権争いの激化が世界経済に与える影響

彼の地の地政学リスクを検証する

中東情勢への懸念が高まっている。最大の原因は、中東での覇権を巡ってイラン(ペルシア)と、サウジアラビア(アラブ)が非難の応酬を続けていることだ。

この対立はイスラム教・シーア派(イラン)と同スンニ派(サウジアラビア)の勢力争いだ。一部の中東専門家の間には、シーア派打倒のためにサウジアラビアがスンニ派過激組織を支援しているとの見方もある。

一般的には、イランが核開発を進めてきたことが地政学リスクを高める元凶であるといわれている。しかし問題はそれほど単純ではない。

サウジアラビアの王家が権力の掌握を目指していることの影響も無視できない。イランの核開発疑惑に関しては、米国と国際原子力機関(IAEA)の見解も食い違っている。当面、地政学リスクへの警戒感は高まりやすい。

 

懸念高めるサウジアラビアの強硬姿勢

中東地域の地図を見ると、国境線が直線的にひかれた国が多い。これは、1916年に英仏露が交わした秘密協約、“サイクス=ピコ協定”の産物だ。3ヵ国はオスマン帝国領の分割を協議し、各国の支配地域を定めた。この結果、文化、宗教を無視した国境線が人為的に決定され、中東の混乱が1世紀以上にわたって続いている。

近年、混乱に拍車をかけているのがサウジアラビアとイランの対立だ。イランだけでなく、サウジアラビアの政治動向が緊張感を高めていることは冷静に考える必要がある。サウジアラビアが目指しているのは、サルマン国王一族に権力を集中し、国内の支配基盤と、中東地域における覇権を強化することだ。

2014年半ばの原油価格の急落は、サウジアラビアの財政を悪化させた。特に、国内のシーア派の若者の不満上昇は顕著であり、同国内でテロへの懸念が高まった。

2016年1月には、サウジアラビア政府がテロ計画に携わったとしてシーア派のニムル師を処刑し、イランとサウジアラビアの国交は断絶された。それ以降、サウジアラビアのイラン批判が強まっている。

加えて、サウジアラビアのムハンマド皇太子は改革を進めると同時に、他の王族の権力を削ごうとしている。ムハンマド皇太子はイスラエルの首都をエルサレムに移転することに理解を示すなど、米国の強硬姿勢に接近している。

強さを誇示することで、ムハンマド皇太子は名を上げようとしている。クウェートがその方針に懸念を表明するなど、サウジアラビアは中東の盟主というよりも不安定感を高める存在になりつつある。

 
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