南スーダンで活動する自衛隊員〔PHOTO〕gettyimages
憲法

憲法9条が日本を危険にさらしてる!? 護憲のジレンマを超える方法

これからの憲法の話をしよう〔前編〕
日本が世界に誇る紛争解決請負人・伊勢崎賢治氏はかつて、憲法は一言一句変えてはならないと考えていた。しかしそれから十数年が経ち、今は改憲しなければマズイと考えている。いったいなぜ? 「改憲的護憲」を唱えるジャーナリスト・松竹伸幸氏と、真正面から徹底討論!
伊勢崎賢治氏と松竹伸幸氏伊勢崎賢治氏(左)と松竹伸幸氏〔PHOTO〕山本遼

「護憲」のジレンマ

伊勢崎: ちょうど1年前(2017年)の5月3日に、安倍首相が「憲法第9条をそのままに、自衛隊を明記する」という加憲案を発表しました。

どのような追加の条文を考えているのかはわかりませんが、これがもし実現して全世界に英語で発表されたら、日本語特有のニュアンスのごまかしが効かなくなり、「法理」の完全崩壊が暴露し、ホント、僕は日本人をやめたくなるので反対です。

だからといって、「護憲」つまり憲法が今のままでいいとは僕は考えていません。

だって、「護憲」は9条の条文を護るために、自衛隊を解釈で合憲化してきた。実質、それは現状の9条条文を護って自衛隊の存在も護る安倍加憲と同じだからです。

つまり、「違憲を合憲とする解釈」を詐欺とたとえるなら、「護憲」は詐欺を従来通り隠したまま続行。安倍加憲は詐欺を開き直って続行。

「護憲」は、「自衛隊は違憲」を貫かないと安倍加憲には、もう対抗できないのです。安倍加憲という最も低脳な手段で、戦後から矛盾をずっと積み上げてきた「護憲」は足元を掬われたのです。

 

一方で、「自衛隊は違憲」という状態を、自衛隊が現場で直面するレジームとしての国際法は許容しません。一時であっても、です。9条2項(「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」)に起因する国際法との「矛盾」です。

だって、国際法は、「戦力」としての自衛隊の国際法違反に対する法整備を求める。日本にはこれがない。ないまま派遣されている。

だから、「護憲」は、護憲的な改憲を考えるしかない。そう思って、僕は「護憲的改憲論」を唱えはじめたのです(たとえば『新国防論』参照)。

これに対して、松竹さんは昨年末(2017年)に『改憲的護憲論』という本を出版された。

僕は護憲的改憲、松竹さんは改憲的護憲

まぎらわしいけど、松竹さんと僕は、この「矛盾」をもうこれ以上見過ごすことなく真正面に捉え解決するという決意では一致している。

僕の方は、護憲の「精神」を大切にしながら憲法条文を改正するべき、という立場。松竹さんは、今の条文のまま、憲法以外の法改正で対処できる、という立場ですね。

今日は二人の共通する部分と違う部分を真正面からあぶり出せたらと思います。

まず、なぜいま『改憲的護憲論』をお書きになられたのですか?

松竹: 現実に自衛隊が何十年間も存在し続けていて、自衛隊に対する国民の共感も幅広くあるにもかかわらず、軍事力を否定するこれまでの護憲論にずっと納得できなかったんです。

改憲的護憲論

自衛隊を否定的に捉え、いずれはなくすべきものと考えている限り、自衛隊に関する議論は先に進まないんですね。そしてそれは国民世論とも乖離している。このままだと護憲派は見放されるのではないかと危機感を覚えました。

現実に、9条と自衛隊は共存している。そこをリアルに見つめて、自衛隊が必要だということを前提に、護憲の立場から問題を提起していこうという思いで書きました。

世界が知ったら仰天する日本の「法の空白」

伊勢崎: 僕は護憲派の中からこういう議論が出てきたことは非常に歓迎すべきことだと思います。そして、15年前であったら、松竹さんの議論に120%賛成していたでしょう。

でも残念ながら、2018年の今となっては、ちょっと遅かった(笑)。

松竹: 遅いですか?

伊勢崎: はい。この15年で何が変わったか。小泉政権以降、自衛隊の海外派遣が劇的に変わりました。旧民主党政権時にもグンと加速しました。それにともなって大規模な事故、国際法上の「軍事的過失」と見なされるものが起きる可能性が、かつてなく高まっている。今この瞬間に起きても全然おかしくない。

これの何が問題か。端的な例を挙げましょう。