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フェイスブック株価を下落に追い込んだ「ESG投資」の仕組み

東芝、神鋼、パソナ…日本企業も危ない
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

能あるハゲタカ、ESGで爪を隠す?

もちろん、アクティビストファンドがリターンを追うのをやめたわけではない。ESGと言った方が、年金や財団などの大手金融機関からの「ウケ」が良くなって顧客資金を獲得しやすくなるし、ESG投資に世界のマネーが流れてESGで稼げるようになったから、彼らはESGに目を向け始めたのだ。

例えばESG評価の高い企業を「ロング(買い)」して、評価の低い企業を「ショート(売り)」する「ESGロング・ショート」戦略も投資成果をあげるようになった。

また、なんらかのコーポレート・アクションによる株価の変動を狙う「イベント・ドリブン」と呼ばれる戦略では、ESG評価の低い経営陣に改善を迫り、それによって実際に企業体質が改善されれば(あるいは改善の期待が市場で高まっただけでも)、株価の上昇が期待できる。

なんだ、ESGと言っても結局投資リターンを狙っているだけの偽善じゃないか、という批判の声も上がるだろう。しかし、それでも社会の需要と合致する方向に大きな投資マネーが向かった方が良い。しばらくはせっかく始まった新しい動きを見守ってはどうだろうか。

 

また、ヘッジファンドによる「ESGトレード」が起きる背景を考えると、そこには本来株主の代理人であるはずの経営者が株主資本という「他人のマネー」を放漫経営で浪費したり、経営陣と馴れ合いの取締役会が株主価値を守るという本来の役割を果たしていなかったりと、マネーを預けた者の「信」を裏切る行為の存在が根底にある。

日本では昨年、香港をベースにするヘッジファンドのオアシスが人材派遣会社パソナに経営改善を迫る提案書を送って話題となった。

大手町オフィスに「牧場」まで作ってヤギやアルパカを飼ったり、ASKA逮捕に関連して報道された豪華な「迎賓館」に株主マネーを使う、同社のガバナンスが問われたのだ。パソナのお金の使い方を見れば、オアシスの言い分の方がまともに聞こえる。

目先の利益より大事なこと

では企業はどう対応すればよいか。気をつけなければならないのは、ESGにはネガティブ評価があることだ。

例えば東芝は会計不正処理問題の発覚後にダウ・ジョーンズのサステイナビリティー・インデックス(DJSI)から排除されたし、品質データ改ざんが問題となった神戸製鋼もESG評価が3段階格下げとなった。

多くのESG評価機関は「不祥事スコア」も数値化しており、ESGの減点対象となる。またESG評価は企業の開示情報に基づくので、企業が遵守していても開示がなければ、減点になってしまう。

東芝や神戸製鋼のケースは目先の利益数字を上げるためにデータ改竄などしたら長期的な企業価値を大きく毀損することにつながる、という典型的なESGのアンチ事例となってしまった。

ESGで重要なことはリターンに対する長期的な視野と積極的な開示だ。その根幹にあるのはサステナビリティ(持続可能性)。投資家にとっても企業にとっても、社会と調和の取れた行動を取ることこそが、長期的な安定利益をもたらし、リスクを軽減するという考えに立っている。

「ハゲタカ」と揶揄されて短期利益を狙うイメージの強いヘッジファンドだが、「エンゲージ」型アクティビストの平均的な投資機関は4年程度と言われており、意外に長期投資だ。

彼らは企業の事業内容も詳しく分析しているから、最近株式市場に多いコンピューターによるHFT(高頻度高速自動トレード *詳しくは前回の記事を参照)に比べれば、ずっとまともな投資手法だと思う。

またアクティビストの中には敵対や脅しではなく、経営陣と一緒にゴルフなどしながら粘り強い助言や説得によって経営を変えることを目指す「友好的アクティビスト」ファンドも存在する。「ハゲタカ」にもソフト路線を好む「ハト派」もいるのだ。

オアシスのホームページはいみじくもパソナの南部社長のこんな言葉を載せた。

「株価が上がる、売り上げが上がる、利益が上がる。そういうことよりも社会に貢献」