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巨大IT企業に対抗する流れに、ニッポンだけが取り残される可能性

このままでいいのか

欧州の本気

EU(欧州連合)が、5月25日からGDPR(一般データ保護規制)の運用を開始する。
氏名、年齢、性別、住所はもちろん、顧客サービスデータ、位置データ、生体認証データなどは、すべて個人データと見なされ、その処理や移転に本人の同意が必要となり、人種や政治的・宗教的信条、遺伝データには、さらに厳しく制限が加えられる。

狙いは、個人情報を独占する巨大IT企業対策である。

頭文字を取ってGAFAと呼ばれる巨大プラットフォーマーのグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムの4社は、一瞬で世界を駆け抜けるデジタル情報化社会をリードしているが、彼らが利用者から取り上げた個人情報を、もう一度、個人に戻そうとするルールである。

利用者とGAFAは、物々交換の世界に生きている。利用者は個人情報を差し出す見返りに、地図や検索サービス、位置情報やアプリなどをタダで利用してきた。双方にメリットのある革新的ビジネスモデルと思われたが、最近は弊害の方が目に付く。

 

まず、情報独占によるプラットフォーマーの圧倒的な収益力とそれがもたらす二極化、GAFAが巨大過ぎるがゆえの競争阻害、知的財産権をタックスヘイブンに移管することによる租税回避、そして吸い上げた個人情報を甘い管理で流出させたことによる選挙への悪影響、などである。

このうち、16年の米大統領選でトランプ有利な情報操作をしたデータ分析・選挙支援会社の英ケンブリッジ・アナリティカ(CA)に、約8700万人分のデータを流出させたとして総攻撃を受けたのが、フェイスブックだった。

私は、本サイトでその背景を詳述した(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55130)。

ただ、フェイスブックが抱える問題は他のGAAも同じである。そして、個人情報問題にとどまらない。

アメリカは、国家戦略としてIT企業を育てた。90年代後半、ITとネットを国家の主戦力と決めたクリントン政権は、通信品位法230条とデジタルミレニアム著作権法512条で、プラットフォーマーに包括免責を与えた。つまり、プラットフォーム上を流れる違法コンテンツや名誉毀損表現は、提供者の責任であってプラットフォーマーではないとするものだ。

これにより、優れたプラットフォームを編み出した企業には、広告料などの形で莫大な使用料が落ちる仕組みとなり、にもかかわらずそこで発生するトラブルは免責されてきた。

フェイスブックのザッカーバーグCEOが、CA問題に関し米議会の公聴会で証言をし、陳謝したのは4月10~11日である。皮肉にも、その2週間後に明らかになった同社の18年1~3月期決算は、純利益が過去最高の49億8800万ドル(5454億円)だった。売上高は116億6600万ドルなので利益率は約43%。この高収益は、米の国家戦略と頭脳と資金が融合するシリコンバレーによってもたらされたものである。EUと各国は、そんなGAFAに対し、GDPRに限らず、EU経済圏保護のために戦ってきた。

多国籍企業の課税逃れに対しては、英政府がグーグル税(利益迂回税)を導入するなど監視の目を強めており、昨年6月には欧州委員会が約24億ドル(約3000億円)の制裁金をグーグルに対して課した。また、競争を阻害する独占的地位とそれを利用した優越的地位の濫用に対しては、独占禁止法で対応している。

GDPRによって、GAFAはその独占的地位を脅かされる恐れがある。CAは、米大統領選だけでなく、英の欧州離脱国民投票の背後にもいて離脱を演出した。心理統計学などを使って人心操縦するという「民主主義の破壊兵器」であるCAのビジネスモデルが、プラットフォーマーが無規制で集めた個人情報を使った操作であることが明らかになった以上、その独占は許されない。

GDPRによって情報を取り戻した個人は、その情報を他のプラットフォーマーに持ち込むことができる。データポータビリティの導入である。

グーグルやフェイスブックが、M&Aを重ねてサービスメニューを増やしたのは、ユーザーを抱え込んで、常時、ログイン状態にし、データをさらに細かく確かなものにして、デジタル広告の精度を上げるためだった。そのユーザーが個人情報とともに抜けるデータポータビリティは、やがてボディブローのように効いてくるだろう。