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女性警察官が、警察を辞めて漫画家になった理由

交番漫画『ハコヅメ』をご存じですか

交番(=ハコ)に勤務する女性警察官の内情を描いた警察日常マンガ『ハコヅメ 〜交番女子の逆襲〜』。単行本の第1巻が発売され、話題となっている。

作者は警察官として働いた経験を持つ泰三子(やす・みこ)さん。安定収入を求めて警察官になった主人公・川合とは裏腹に、安定収入を捨ててマンガ家になった泰さんに、この作品に込めた思いと、彼女が経験してきた警察の日常について聞いた。

(第一話はこちらから読めます→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55509

過労死が多い警察官の現状をなんとかしたかった

──そもそもなぜ警察官になろうと思ったんですか?

 子供の頃から母に「ニュース番組で交通事故や殺人事件が出てきたら、家族のことだと思って見なさい」と言われていて、それでニュース番組を見るのが苦手になったんですよ。事故や殺人事件の被害者が、もし家族だったらと思うと怖くて……。だから警察官になろうと思ったんです。

──でも警察官というのは、事故や事件を日常的に目にするわけですよね。それは平気だった?

 どこかスイッチが切り替わるんですかね、仕事だと怖くないんです。自分がその事件や事故に対してやらなきゃいけないことがある状況だと、「ちゃんと仕事をしないと」という責任感がわいてくるので。

──どんな部署を経験されたんですか?

 最初が交番勤務で、あとは防犯の広報などを担当していました。在籍していたのは約10年です。

 

──約10年勤務して辞めたのは、何かきっかけがあったんですか?

 話せば長くなるんですけど……。警察の職場は、過労死がけっこう多いんです。いい人ほど、仕事をたくさん請け負うから早く亡くなってしまう。私が育休に入ったとき、お世話になった刑事さんが過労で亡くなって、それはたまたまそのタイミングだったと思うんですけど、でもそのときの私は「自分が抜けて組織に負担をかけたから亡くなったんじゃないか? 私の出産と引き換えに殺してしまったんじゃないか?」という感覚に陥ってしまって。

それで、「育休から復帰したら警察官の募集の広報に力を入れて、警察官の負担を減らしたい」と思うようになったんです。高校生の社会科見学を担当したことがあったんですけど、「警察官になりたい人はいますか?」と聞いたら、誰も手を挙げなかった。

一人だけ、手を挙げかけた男の子がいたので聞いてみたら、「前は警察官になりたいと思っていたけど、親に『自分のことも一人前にできないのに、人を助ける仕事ができるはずがない』と言われてあきらめた」と言うんです。内心、「そうじゃない! そんなに立派じゃない人たちが、ただ一生懸命にやっているだけなんだよ!」と思ったんですけど、そのときはうまく返せなくて。

そこから、「あの男の子みたいな人たちに、どうすれば警察の仕事を伝えられるだろう?」と考えていたんです。文章だと、たぶん若い子は読んでくれない。じゃあマンガだと読んでくれるんじゃないか? 

でも私みたいな下っ端が、広報でマンガの企画を立てても、絶対に決裁はおりない。じゃあ『モーニング』みたいな有名な雑誌に載ったら、みんな読んでくれるんじゃないか? そう思って、1ページのマンガをモーニング編集部に送ったのがきっかけです。

──そこで執筆につながる! 「マンガ家になりたい」じゃなく、「警察のことを知ってほしい」というのが動機だったわけですね。