北朝鮮

南北首脳会談「対話全文」から見えた金正恩の野望と対日方針

34歳指導者の本音を読み解く

キーワードは「一致」

まるで南北離散家族の親子が再会したかのような、晴れがましい握手と抱擁--。

4月27日、3回目となる南北首脳会談が、南北を隔てる板門店の韓国側で行われた。2000年6月の金大中大統領と金正日総書記の会談は、「和解」だった。2007年10月の廬武鉉大統領と金正日総書記の会談は「発展」だった。そして今回の会談のキーワードは「一体」である。

午前9時29分、南北境界線の北側「板門閣」から金正恩委員長が現れ、南側に立って待つ文在寅大統領の方に、のっしのっしと歩き出した。そして南北境界線の「板」を挟んで、二人は握手を交わした。

 

この両首脳の初対面の挨拶の場面を、少しでも臨場感を持たせるために、ハングルをカタカナ表記してから訳出する。
 
金正恩:パンガプスムニダ(お会いできて嬉しいです)
文在寅:オシヌンデ ヒムドゥルジ アナッスムニカ?(いらっしゃるのに大変でなかったですか?)
金正恩:アニムニダ(いいえ)
文在寅:パンガプスムニダ(お会いできて嬉しいです)

金正恩:チョンマル マウム ソルレミ クチジアンコヨ、クロッケ ヨクサジョギン チャンソエソ マンナニカ、ト テートンリョンケソ イロン プンゲソンカジ ナワソ マジヘジュンデ テヘソ チョンマル カムドンジョギムニダ(本当に胸がドキドキして止まらないです、こんな歴史的な場所で会ったので。また大統領がこんな境界線まで来て迎えてくれたことに対して、本当に感動的です)

文在寅:ヨギカジ オンゴスン ウィウォンジャンニム アジュ クン ヨンダンイオッスムニダ(ここまで来ることは、委員長様はとても大きな勇断でした)
金正恩:アニアニ、アニムニダ(いやいや、そんなことありません)
文在寅:ヨクサジョギン スンガヌル マンドゥロッスムニダ(歴史的な瞬間を作りました)

金正恩:パンガプスムニダ(お会いできて嬉しいです)
文在寅:イッチョグロ ソシルカヨ?(こっち側にお立ちになりますか?)
(金正恩委員長が、よっこいしょと南北境界線をまたいで、韓国側に立った)
文在寅:キム ウィウォンジャヌン ナムチョグロ オシヌンデ ナヌン オンジェッチュム ノモガルスイッケンヌニャ(金委員長は南側にいらっしゃったのに、私はいつになったら越えることができるだろうか)
金正恩:クロム チグム ノモガボルカヨ(それなら今、越えてみますか)(そう言って文在寅大統領の手を取って、南北境界線をまたいで北朝鮮側に渡った)

このように、通訳を通さずにスラスラと会話が進んでいくところに、同じ民族の「心地よさ」を感じる。

金正恩「無言の意思表示」

それにしてものっけから、金正恩委員長が突然、文在寅大統領の手を取って、境界線の北側に「案内」したことはサプライズだった。世界中から集まった4000人以上の記者たちが、このビッグ・サプライズの見証者となった。 

私は、NHKの生中継で見ていたが、この直後に興味深いことが起こった。二人で再び手を取り合って、境界線を南側に渡る際、文在寅大統領は慎重に境界線を跨(また)いだ。ところが金正恩委員長は、境界線を踏んづけて渡ったのである。「境界線などなくしてしまえ!」という無言の意思表示に思えた。

両首脳は、境界線から歩いて、300人の儀仗隊による栄誉礼の歓迎を行った。衣装や音楽は、朝鮮民族の伝統的な様式である。金委員長の後ろには、妹の金与正党第一副部長がついている。与正副部長はこの日、兄の秘書役を務め、李雪主夫人は晩餐会になって参加した。

文在寅:外国の人々も、わが伝統の儀仗隊が好きです。ただ、今日お見せしている伝統的な儀仗隊は略式で、残念です。「青瓦台」(韓国大統領府)にいらっしゃれば、素晴らしくよい場面をお見せすることができるのですが。

金正恩:あっ、そうですか? 大統領が招待してくだされば、いつでも青瓦台に行きますよ。

この金委員長の返答は、2番目のサプライズである。1968年1月、青瓦台に朴正煕大統領暗殺部隊を送り込んだ祖父・金日成主席は、草葉の陰で何と思うだろうか?

儀仗隊の奏でる伝統音楽を聞きながら赤絨毯の上を歩いた両首脳は、共に笑顔だった。

金正恩:今日この場所に来て、閲兵が終わったら戻らなければならない者たちもいる。

文在寅:それなら帰られる前に、南北公式随行員が皆で、写真を撮ったらいい。

朝鮮半島の人たちは、基本的にアドリブで生きているから、予定になかった全員での写真撮影となった。