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「予想外の円安ドル高」はいったいどこまで進むのか

日米為替レートの謎を解き明かす

最近のドル円レートをどう見るか

予想外に円安が進む展開となっている。現時点でドル円レートは1ドル=109円前後で推移している。

円安は今週になって大きく進んだが、興味深いことに、某経済週刊誌が為替、特に「ドル暴落が迫っている」というような内容の特集を組み、これが発売されたころから円安ドル高が進んでいるような気がする。

その某経済週刊誌に限らず、最近の為替見通しは円高ドル安を示唆する内容が多い。その理由として多く指摘されているのは、トランプ大統領の保護貿易政策に対する懸念と米国の経常収支赤字、及び、日本の経常収支黒字の拡大である。

だが、このような国際収支と為替レートの関係は、特に80年代後半以降、明らかに希薄化している(図表1)。

また、日本の政策当局が米国トランプ政権の貿易黒字削減要請に「忖度」して、為替レートを円高気味に誘導するという懸念についても、日本銀行が引締め気味の金融政策に転換しない限りあり得ない話で、かつ、その可能性は現段階ではまだないと思われる。

よって、このタイミングでの円高論というのは残念ながら時期尚早で勇み足ではなかったかと考える。

 

ところで、この最近のドル円レートの動きをどう考えるかである。

筆者は、FRBの利上げが「金融政策の正常化」(危機を脱した米国経済の状況にふさわしい政策金利水準に戻す政策)の域を逸脱して、「金融引締め」の領域に入りつつあるということが、マーケット関係者の間であらためて意識されたためだと考えている(この点については以前に当コラムで「均衡イールドカーブ」という話でさせていただいた)。

一方、日本の金融政策の基本線は変わりがないので、いわゆる「日米金融政策の差」で考えると、「米国引締め・日本緩和」ということになり、引締め度がより強まることが予想される米国の通貨ドルの価値が高まったということなのであろう。

ドル円レートと日米マネタリーベース

為替レート変動の主な要因が「日米の金融政策の差」であると考えるのは妥当だと思われるが、実は、この「日米金融政策の差」を具体的に表現するのはなかなか難しい。

一般的な為替の理論では、「日米の政策金利の差」が妥当だが、実際の動きをみると、為替レート変動を説明しているとは言い難い(図表2)。

そこで、「日米金融政策の差」を日米のマネタリーベースの比率で表現し、それと為替レートの関係を示したのがいわゆる「ソロスチャート」といわれるものである。

実は、この「ソロスチャート」は、今から20年以上前に、ジョージ・ソロス氏が率いるヘッジファンドから筆者が当時勤務していた会社に作成およびデータ更新の依頼があり、その下請け作業で筆者が作成したものである。ただし、依頼自体は、マネタリーベース比率ではなく、M1(現金+預金通貨)比率であったので、その後、それを筆者がマネタリーベースに置き換えた。

実際にソロス氏と面会した浜田宏一先生によると、ソロス氏自身は、そのようなチャートの作成を依頼した記憶はないということなので、おそらく部下が好んで使用していたのであろう。

話が脱線したが、その「ソロスチャート」でも(当たり前だが)為替レート変動を完全に説明することはできない。