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「一極集中」が進む物流、もしその機能が止まったら…

小説『バルス』が伝えるもの

現代社会の陰と陽

まことに便利な時代になったものである。ビジネスの現場を離れ、現在の仕事に専念するようになって22年になるが、その時点では想像だにできなかった世の変貌ぶりだ。

私が生まれた60年前の社会からすれば、まさにSFの世界である。すべては、より便利に、かつ快適な社会にしようと、新技術や新ビジネスモデルの確立に心血を注いできた人間たちの成果なのだが、「何かを得れば、何かを失う」という言葉の通り、万事において陽があれば陰もあるのが世の常だ。

加速度がつく一方の技術の進化によって、企業は組織体制の変革を頻繁に迫られるようになり、雇用基盤が不安定なものになってしまったのは、陰の部分の最たるものであろう。

新技術のほとんどは、業務効率を高めるものだ。従来10人でやっていたものが、4人で済むようになれば6人は不要となる。そんな技術が相次いで出現する時代である。

経営者にとって最大のリスクは労働者、それも簡単には解雇できない、できたとしても、インセンティブを与えなければならない正社員ということになる。

そこで雇用の調整弁として重宝されるのが、派遣や契約社員、いわゆる非正規労働者である。

 

派遣の仕事の多くは時給制。契約社員にしたところで大差はない。増員、減員も思いのまま。企業の側からすれば、使い勝手のいいことこの上ない労働力といえるのだが、非正規労働者の増加は、中長期的視点に立って考えれば、企業、ひいては社会の存続を危機に陥れる結果を招くのは明らかである。

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体を壊せば無収入の時給、固定給では将来設計など描きようがないからだ。

巷間「ひとり口は喰えないけれど、ふたり口は喰える」といわれるように、なるほど結婚はできるかもしれない。しかし、子供を持つのはまず無理だ。

マイホームに至っては、夢のまた夢。老後の蓄えどころか、日々を生きていくのが精一杯。まして、非正規労働者が貴重な戦力とみなされているのも、機械にやらせるよりも、人を使った方が安くつくからだ。

つまり、今後も時給、固定給が格段に上がることはあり得ないのである。かくして、少子化問題などいつまでたっても解決されないどころか、逆に人口減少には拍車がかかる一方となる。