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国際・外交

「パワーセックス」で議員を籠絡? 米国「ロビイスト」日中韓の実力

いちばんカネをかけている国は…

日本ではあまり馴染みのない、政治家・政府要人に対する「ロビー活動」。だが米国政界では法的裏付けも存在し、当たり前のこととして行われている。報じられないその裏側とは? しばしば言われる「中国・韓国の影響力」はどのくらいなのか? 明治大学教授・海野素央氏のレポート。

「ロビイング教室」もある

筆者は3月上旬、研究の一環として、米国の首都ワシントンで開催された「米・イスラエル公共問題委員会(AIPAC エイパック)」の年次総会に出席しました(詳細は4月4日記事「『ユダヤ系ロビー団体』巨大イベントで見えた、日米の不安すぎる未来」を参照ください)。AIPACは1963年に設立された米国最大のユダヤ系ロビー団体で、保守系・親イスラエルの団体です。

この総会では、「ロビイングの方法」に関する初心者向けの分科会が開催され、総会が終了するとバスで会場から連邦議会に移動して、共和・民主両党の議員を対象に、実際にロビー活動を行うひと幕もありました。

保守系のAIPACに対して、左派系とみられている新興のユダヤ系ロビー団体が「Jストリート」です。設立は2007年11月で、AIPACと同じくワシントンに本部を構えています。

AIPAC全国政治副部長のエドワード・ミラー氏は、「AIPACは(今年秋に行われる)中間選挙で、特定の候補を支持しない」と語っていました。

一方、Jストリートは、イスラエルや中東政策に関して候補者に面接を行い、合格した候補に政治資金をはじめとする様々な支援をしています。どちらの団体も、イスラエル関連法案を成立させる、ないしは葬るために、ロビー活動を行っています。

米国では、このような外国の利益を代表するいわゆる「外国ロビイスト」は、1938年に施行された外国代理人登録法(FARA)によって米司法省に登録することが義務づけられています。

司法省が米議会に提出した報告書(2017年6月30日)には、米国内でロビー活動を展開している弁護士事務所や広告代理店、コンサルタント会社、クライアントの名前、ロビー活動の内容及び報酬が国別にリストされています。

そこで、中国、韓国、日本を取り上げて比較してみましょう。

 

日本も意外と頑張っている

まず、ロビイストの登録数は中国が14韓国が28であるのに対して、日本は50で、中国の3倍以上です。

中国は、主として貿易問題の調整や同国への観光旅行の促進を図る目的でロビー活動を展開しています。

在米中国大使館が使っているロビイストの中には、西部ネバダ州ラスベガスに本社を置くある広告代理店が含まれています。この広告代理店の代表はブッシュ(父)政権時代のホワイトハウスのスタッフで、在米中国大使館の利益を代表して共和・民主両党の議員や政府要人にロビー活動を行っています。

2017年に対中貿易赤字が3750億ドル(約39兆円)に達すると、トランプ政権はその対策として、中国製品に報復関税をかける措置をとりました。在米中国大使館が、ロビイストを通じて米中の貿易政策に影響力のある上下両院の議員やスタッフにコンタクトをとり、両国の貿易戦争回避に努めていることは容易に想像ができます。

また在米韓国大使館が使っているコンサルタント会社は、北朝鮮の核・ミサイル問題や韓国への地上配備型迎撃システム「終末高高度防衛(THAAD)」の配置、米韓自由貿易協定(FTA)に焦点を当ててロビー活動を行っているようです。

一方、日本のロビイストは登録数が50で、そのうち24が在米日本大使館と在米日本領事館を代表してロビー活動を行っている弁護士事務所などです。それに加えて、日本政府のロビー活動をしている広告代理店やコンサルタント会社も5社登録しています。

その他には、ニューヨーク、ロサンジェルス、シカゴ、アトランタ、サンフランシスコ、ヒューストンのジェトロ(日本貿易振興機構)や福岡県、神奈川県、沖縄県、神戸市もワシントンに事務所を構え、ロビイストとして登録をしています。米軍基地の問題を抱える一方で、観光もアピールしなければならない沖縄県がワシントンに事務所を構えているのには納得がいきます。

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登録数からいえば、確かに日本が多いことがわかります。しかし、前述した2017年6月30日の報告書に基づいて、中国、韓国、日本を代表してロビー活動をしている弁護士事務所などが半年間で得た報酬をそれぞれの国別に合計してみると、異なる結果が出てきました。

ロビイング報酬の額は、中国が732万ドル(約7億9000万円)、韓国が3770万ドル(約40億7000万円)、日本が2170万ドル(約23億4000万円)で、韓国がトップになるのです。

トランプ大統領は、オバマ政権時代の2012年3月に発効した米韓自由貿易協定を「ひどい合意だ」「不公正な取り決めだ」と批判し、見直しを求めてきました。そこで危機感を持った韓国政府は再交渉を行い、特に自動車、鉄鋼、農産物において不利な条件を呑まされされないよう、ロビイストを使って攻勢に出たのでしょう。