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プロが教える「滑舌のいい声」をつくる、驚きの方法

「舌力」を鍛えれば劇的に変わる

滑舌を阻害する要因

「舌力」(ぜつりょく)と聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか? 巻き舌をつくる力? いいえ。サクランボの柄を舌で結ぶことができる力? いえいえ(笑)。

舌は7つの筋肉からできている、それ自体が大きな筋肉の塊です。なかでも滑舌よくしゃべるために必須の筋力があって、それを私が「舌力」と命名したのです。

では、なぜそんな言葉をつくるに至ったのか、時系列に沿ってお話ししましょう。

私は20歳のときにFM東京(現TOKYO FM)の番組で三浦友和さんの相手役のDJとしてプロデビューし、しばらくタレント活動をしたあと、声の世界に進みました。

アニメ声優、番組ナレーター、野球の実況中継アナ(女性では初めて)から銀行のATMの音声案内まで、ありとあらゆる声の仕事を経験してきた幅の広さを買われて、やがて声優養成機関で声優志望の後進たちの指導もまかされることになりました。

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何百人という人たちの口内をひたすら覗き込み、滑舌を阻害する「真犯人」をついに突きとめるまでの、これが長い旅路のはじまりでした。

■容疑者1「口の開けすぎ」

指導を始めてすぐに、多くの生徒たちの滑舌が、何かおかしいことに気づきました。少し変なのではなく、根本的におかしいのです。しかし20人もいるクラスではとても一人一人の問題まで見きれません。

そこで思いきって、個人レッスンのみに切り替えました。じっくりと一人一人の口を見ていくと、滑舌がおかしな人には共通の原因があることがわかってきました。

「滑舌よくしゃべるためには、口を横に目いっぱい大きく広げなくてはならない」と思い込んで大口を開けている人があまりにも多かったのです。これは、そう教える間違った指導者が多いからです。本当は口を小さく狭めることのほうが、滑舌ではずっと重要なのです

■容疑者2「反れない舌」

そこで「口を小さく」と指導したのですが、それもうまくできない人が大勢いました。その人たちをさらに観察すると、舌が歯の横からはみ出していたり、しゃべるときに前歯より前方に突き出たりと、やたらに舌が目立ちました。体は細いのに舌だけ太っている人もいました。

声のプロは、そんな舌はしていません。薄く、センターがぐっと反った形をしているものです。

そこで、生徒たちにも「舌の反り」が重要だと説き、割りばしを使って反る形や場所を覚えてもらえるように工夫したりもしたのですが、それでも会得してもらうのは難しいことでした。

■容疑者3「前に出た下顎」

さらに観察した結果、気づいたのが、舌を反らせることができず、だらしなく広がっている人は、かなりの割合で下顎が出ていて、受け口気味でしゃべっているということでした。

下顎が出ると一緒に舌も前に出てくるので、当然、舌が目立ちます。これこそが舌をコントロールできない原因ではないかと考えました。

そこで、下顎が前に出ている生徒たちを何人も矯正歯科医に相談に行かせました。ところが、程度がそう甚しくなく「普通の人より出ている」くらいの人は、「矯正の必要なし」と、ことごとく門前払いされてしまったのです。私としては、そういう人こそお願いしたかったのですが……。

せっかく滑舌を阻害する犯人を追いかけてここまできたのに―と、さすがに希望を失いかけました。