国際・外交

元経済ヤクザが読み解く「シリア空爆と大国の仁義なき戦い」の行方

結局得するのはだれなのか

ヤクザの世界の実例で読み解く世界情勢

財務省の不祥事や森友・加計問題など、日本国内の政治は混乱しているが、いうまでもなく諸外国には何の影響も与えていない。国際社会でもっぱら話題となっているのは、シリア空爆とその行方である。これほど重要な問題に日本人がほとんど無関心であるのは嘆かわしいことだ。今回は、シリア問題について解説してみようと思う。

まずは時系列で整理をしよう。

4月4日、シリア政府軍が東グータ地方のドゥーマー市を化学兵器で攻撃。救助活動を行うシリア民間防衛隊などは、塩素ガス弾の使用疑惑を指摘し49人が死亡したと発表した。これに即反応したのがアメリカで、6日には空爆を行っている。大統領のドナルド・トランプ氏(71)は、14日にはホワイトハウスでのテレビ演説で、

「人間のやることではない。むしろ、化け物による犯罪だ」

とシリアの大統領、アサド氏(52)を名指して糾弾した。

 

一般市民、兵士、老若男女の区別なくダメージを与える化学兵器による攻撃は鬼畜の所業といえよう。しかし、一方で多くの日本人が今回のシリアの一件を「人道の問題」で留めてしまうことに私は強い違和感を覚えている。国際政治はもっと打算的だ。

今年11月にはアメリカで中間選挙が行われるが、トランプ氏の共和党過半数獲得には黄色信号が点いている。「人道」を訴えるトランプ氏の頭の中に、シリア攻撃でのポイント稼ぎがあることは間違いないだろう。

また、シリアに国際社会が注目するのも、ことの成り行き次第で原油価格が高騰し、それが為替を動かし、さらには株式市場にも影響を及ぼすからだ。もちろん、儲ける者の裏側には損をする者もいる。「人道よりマネー」は国際金融の冷たい現実だ。

戦争が悲惨なのは、ただ人が死ぬことではない。覇権国の政治状況や、金融など当事者とはまったく無関係な思惑が命を奪うからである。そして実はここにシリア問題の本質が隠れていると私は考えているのだ。

戦争は究極の暴力で、複雑な暴力の絡み合いである。これを読み解くときに役に立つのが、自身のいたヤクザの世界の実例である。

暴力団の抗争に「代理戦争」というものがあるが、最も有名なのが第二次広島抗争だ。終戦後の1950年頃から広島県内で勢力争いが起こる。一度は落ち着くも跡目争いで岡組から打越組が離反し、三代目山口組傘下に入り打越会となる。一方岡組の跡目として指名された山村組は、神戸の本多会・本多仁介会長と兄弟盃を結んだ。

こうして、広島は三代目山口組と本多会の代理戦争の地となった。最終的には、死者9人、負傷者13人がでる惨事に。山村組は発展的解消し、政治結社共政会となり、打越会は解散。のちに山村会長、打越会長ともに引退する。

これを広県内の抗争と見ると、各組織の思惑が入り乱れ全体が見えなくなる。ただし大組織の思惑から考えれば話は別だ。この時、三代目山口組は中国地方全域を勢力下に置く思惑があり、広島はその重要拠点だった。また、本多会は三代目山口組と関西を二分していて、中国地方を勢力圏にしていたことから、広島を取られるわけにはいかなかったのだ。

三代目山口組は犠牲者こそ出さなかったものの、広島進出に失敗。大組織の思惑に巻き込まれ、実に20年以上の血で血を洗う戦いは文字通り「仁義なき戦い」となった。

個々のケンカという「ミクロな視点」からこの抗争全体の意味を見出すことは難しい。大組織の思惑という「マクロな視点」を持てるかどうかが、この抗争の意味を理解する重要なポイントだろう。

先のトランプ氏の中間選挙を好例として、シリアの件もまた、大国の思惑から考えることが問題の本質を解き明かすための重要なキーだと私は考えている。