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高学力だけでは不十分な時代に求められる「教育とスキル」は何か

教育の成果を最大化するには
畠山 勝太 プロフィール

ソーシャルスキルの重要性

件の論文によると、機械化されやすい仕事はルーティーンワークを伴うものとされる。

ルーティーンワークと言われると、ブルーカラー系の仕事を思い浮かべるかもしれないが、前々回の記事(「世界のエリートが重視する『STEM教育』日本が抱える2つの難題」)で重要な分野であると言及したSTEM系の一部の仕事においてすらこれは当てはまる。

図2が示すように、コンピューターサイエンスなどの一部の分野では雇用が増加しているものの、生物や物理の科学者など雇用を減らしている分野もあり、特にエンジニア全般に対してこの傾向が当てはまる。

対照的に、依然として機械によって置き換えられづらい仕事が存在している。それは、ソーシャルスキルが要求されるものである。

例えば、見るからに不機嫌な客が入ってきた時に対応に特段の注意を払ったり、苦しそうな患者がやってきた時に慮った対応をしたり、といったスキルが機械によって置き換えられるのは、まだ少し先の話のようである。

実際に、教師や看護師、ビジネスサポートなどの職種では雇用が増加している。

しかし、数学力と高いソーシャルスキルという二つの軸を基に詳細に見ると、ソーシャルスキルの影響はより広範にわたることが浮かび上がる。

図3が示すように、高い数学力が求められる職の中でも、高いソーシャルスキルが求められる職は給与が大きく増加しているのに対して、そうでない職では給与の伸びが低く、むしろ求められる数学力は低くとも高い社会性を求められる職よりも伸びが低い。

 

ここでカギとなるのが分業やチーム作業である。

これらは国と国の貿易関係に例えることが出来る。国と国がお互いの得意な分野を活かして相互に貿易を行えば双方に恩恵が及ぶように、個々人がお互いの得意な分野を活かして協働すれば、自分一人ですべてを抱え込んで働くよりも生産性が上がる(=より高い賃金を得ることができる)。

そして、関税や非関税障壁が貿易の拡大を妨げてしまうように、人と人が協働する際に、ソーシャルスキルの低さはチーム形成やチームワークを妨げるものとなってしまい、生産性を上昇させる足かせとなってしまう。

さらに、高度に発展した経済を持つ国同士で貿易の恩恵が大きいように、高度なスキルを持つ者の間で、この協働の恩恵は大きくなる。

このように、経済の発展と共に個々人の持つスキルレベルも上昇し、これを協働させるためのソーシャルスキルの重要性も高まってきた、というわけである。