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週刊現代 アメリカ ロシア

トランプが「史上最弱の大統領」であることを示す、16本のメモ

プーチン大統領との黒いつながり

英『ガーディアン』紙モスクワ支局長を務めたのち、ロシア政府から国外追放処分を受けた経験を持つジャーナリスト、ルーク・ハーディング氏の著書『共謀 トランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ』が、事情通の間で話題になっている。トランプ政権最大にして現在進行形のスキャンダル「ロシアゲート」の裏側を暴く本書を、佐藤優氏はどう読んだのか?

トランプ政権の大スキャンダル

英国はインテリジェンス大国だ。この国で対外インテリジェンスを担当するのがSIS(Secret Intelligence Service秘密情報部、いわゆるMI6)だ。SISを退官した専門家が、商業ベースで活動する民間インテリジェンス機関が多数ある。

SISでソ連(ロシア)を担当したクリストファー・スティールが2016年6月に作成した「アメリカ大統領選挙 共和党候補ドナルド・トランプのロシアにおける活動とロシア政府との有害な関係」と題するインテリジェンス・メモが米国のトランプ政権を揺るがすことになる。

インテリジェンス・メモ(日本外務省のインテリジェンス部局では分析メモと呼ばれている)は、本文の前に要旨が必ず付される。忙しい幹部政府職員が内容を短時間で把握できるようにするためだ。このメモの要約には以下のことが書かれていた。

〈・ロシア政権は少なくとも五年前からトランプを開拓、支援、援助している。これは西側の同盟の分裂・分断を促すことを狙ったもので、プーチンが承認している。

・現時点でトランプは、彼をより深く取り込むためにロシア政府が持ちかけた同国での不動産取引を断っている。しかし、彼や、彼の側近たちは、民主党内をはじめとする政敵に関するものも含む情報をロシア政府から定期的に受け取っている。

・ロシア諜報機関の元トップの話によると、FSB(編集部注:ロシアの治安機関であるロシア連邦保安庁)はトランプのモスクワでの行動を通じて、彼を恐喝できるだけの弱みを握っている。事情に精通した複数の情報源によれば、彼のモスクワでの行動には、FSBによって仕組まれ、監視された性的倒錯行為が含まれる。

・ロシアの諜報機関は長年にわたり、ヒラリー・クリントンの弱みとなる情報を収集している。一連の情報の中心は、問題行動ではなく、複数のロシア訪問の際に交わされた会話の盗聴記録や、通話傍受記録である。

情報はプーチン直々の指示によりロシア大統領府のペスコフ報道官が管理している。しかし、それが国外と共有されたことはなく、トランプにも伝わっていない。情報の扱いに関するロシアの意図はわかっていない〉

このようなメモが16本あるという。

 

〈メモによれば、トランプには異常な性癖があった。これが真実なら、彼には恐喝を受ける可能性があったことになる。

スティールの協力者たちは、卑猥な行為の詳細を伝えている。それによると、二〇一三年にトランプがモスクワを訪れた際、ロシアの諜報機関は「彼の個人的な執着と性癖」を探り出そうとした。作戦は成功したと言われている。

トランプはリッツ・カールトンの最高級スイートに「(大嫌いな)オバマ大統領夫妻がロシア公式訪問の際に泊まったのを知って」いて、同じ部屋を予約した。

メモによれば、トランプはオバマが寝たベッドをわざと「穢した」とされる。売春婦たちが「彼の目の前で『黄金のシャワー』(放尿)をした」のである。メモはまた、「このホテルはFSBの管理下にあることで知られている。すべての主客室にマイクや隠しカメラが仕掛けられていて、望んだことは何でも記録できるようになっている」と説明している〉

「闇のつながり」の証拠

さらに2016年11月の米大統領選挙でもトランプ陣営がロシアと共謀して信じがたい行為をしたことが記されている。

〈トランプ陣営がクリントンに対するハッキングでロシアと連携していたというのである。しかも、トランプ側も密かに費用の一部を支払っていたという〉

上記のようなことを記した話題の書『共謀』で、著者のルーク・ハーディング氏は、〈スティールの報告を信じるなら、トランプはロシアと共謀していたことになる。双方は、互いに相手の望みをかなえる一種の取引関係にあった〉と書くが、評者は本書の内容を額面通りには受け止めていない。

ハーディング氏はSISやCIA(米中央情報局)、FBI(米連邦捜査局)と緊密な関係を持っていることが本書の行間から窺われる。『共謀』には真実と共に、トランプ氏とロシア(特にプーチン露大統領)の信用失墜を意図した操作された情報が含まれている。「嘘のような本当のことと本当のような嘘」を巧みに混ぜたディスインフォメーション(情報操作)工作の武器として本書を受け止めるべきだ。