厚木市、小田原市など20市町をホームタウンとするベルマーレ(photo by gettyimages)
経済・財政 サッカー

ライザップの「Jリーグ参入」が日本のスポーツ界を変える可能性

「湘南の暴れん坊」を傘下に
「15年間、親会社なしの市民クラブ=低予算」というハンデを背負い、大企業にバックアップされた強豪チームがひしめくトップリーグ・J1の壁に何度も跳ね返されてきた湘南ベルマーレ。4度目のJ1昇格を果たした今シーズン、19年ぶりに親会社を持つこととなった。「湘南の暴れん坊」が、健康産業の風雲児・RIZAPのバックアップを受けて、どのように変わって行くのか。Jリーグ開幕時からベルマーレをフォローしてきた戸塚氏によれば、今後の日本のスポーツの将来を占う意味でも目が離せない存在だと言う。

主力選手を毎年のように引き抜かれるチーム

「結果にコミットする」をキャッチフレーズとするRIZAP(ライザップ)グループが、Jリーグのクラブの経営に乗り出すことになった。

同社と株式会社三栄建築設計がRIZAPグループの子会社となる合併会社を設立し、ベルマーレを連結子会社化して運営することになったのである。

 

国内トップカテゴリーのJリーグのクラブは、サッカーのプロ化以前から大企業がバックアップしている。たとえば、トヨタ自動車が名古屋グランパスを、日産自動車が横浜F・マリノスを、三菱自工と三菱重工業が浦和レッズの筆頭株主を務めている。

世界的な企業が経営に携わるJリーグにおいて、ベルマーレは異色の立ち位置で活動してきた。1999年に準大手ゼネコンのフジタが撤退し、翌2000年から親会社を持たない市民クラブとしてリスタートをはかったのである。戦いの舞台もJ1ではなくJ2となった。

小口のスポンサーを地道に集め、ホームタウンを拡大して商圏を広げていきながら、ベルマーレは2010年にJ1昇格を果たす。この頃からベルマーレのサッカーは面白いとの評判が広がり、2012年に曺貴裁(チョウ・キジェ)監督が就任すると明確な個性を確立する。

90分間足を止めずに走り続け、DFも積極的に攻撃に参加するサッカーは「湘南スタイル」と呼ばれるようになり、選手たちの間には「ベルマーレに行けば成長できる」との認識が広がっていく。

試合開始から終了まで走り続けるのが「湘南スタイル」(ptoto by gettyimages)

ところが、「湘南スタイル」の定着はベルマーレに思いがけない悩みを運んできた。主力選手を毎年のように引き抜かれてしまうのである。

Jリーグは各クラブの経営情報を年に一度開示しており、2016年度分から監督、選手らの年俸に当たるチーム人件費を抜き出してみる。

J1の18チームでもっとも人件費が多いのは、浦和レッズの23億8100万円で、2位はヴィッセル神戸の20億6800万円、3位はFC東京の20億2500万円、4位は名古屋グランパスの19億8400万円、5位は横浜F・マリノスの19億6600万円だった。

クラブ名を主要株主に置き換えると、三菱自工と三菱重工業、楽天、東京ガス、トヨタ自動車、日産自動車、の順になる。6位以下の主要株主にも、新日鐵住金(鹿島アントラーズ)、パナソニック(ガンバ大阪)、日立製作所(柏レイソル)、富士通(川崎フロンターレ)といったメジャー企業が並ぶ。

ベルマーレの人件費は、7億9800万円だった。7億3800万円のヴァンフォーレ甲府に次いで、J1で2番目に少なかった。その結果として「他クラブから選手に届く移籍のオファーに対して、金銭的に勝負できない」(水谷尚人・湘南ベルマーレ代表取締役社長)という状況が続いてしまう。

ベルマーレのサッカーが好きだから残りたいと願う選手を引き留められず、戦力を保持できないゆえにJ1に定着することも叶わない。J1昇格とJ2降格を繰り返してきた(この10年間に3度昇格し3度降格して、今季が4度目の昇格)。

欧州や南米のサッカー先進国には、選手を育てて他クラブに売ることで経営を成り立たせるクラブもある。ベルマーレも同じような道を歩んできたが、中学生年代の育成にかかる費用だけで毎年5000万円の赤字を計上してきた。「育成に定評がある」との評価を受けつつも、その内実は苦しいものだった。