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あらゆるものを資産化する「メルカリ経済圏」のポテンシャル

日本発のルールにこそ活路はある
田中 道昭 プロフィール

買い物の仕方が変わった

メルカリのインパクトは何も中古品市場を発展、拡大したというだけに留まらない。中古品が手軽に手に入るサービスが広がると、消費者の新品の購入にも大きな影響を与えることになるからだ。メルカリはアマゾンがそうだったように産業全体に大きな変革を促す力を持っている。

昨年、メルカリは「メルカリNOW」という、即時買い取りサービスを始めた。ユーザーが売りたい商品をスマホで撮影するだけで、買い取り価格が表示される。メルカリの過去の取引情報から、適正な買い取り価格をAIが瞬時に算定するのである。このサービスは出品の際の適正価格を表示できるサービスまで拡大されていく。

それにしたがって消費者の買い物の仕方に変化が現れる。例えば消費者は百貨店でコートを購入する際に、メルカリでの買い取り価格を調べるようになってきている。

Photo by iStock

10万円のコートが8万円で売れると分かれば、2万円の出費でお気に入りのブランドを身にまとうことができる。消費者は数回着るとメルカリで処分して、また次のブランドを買う。こんな購買行動がすでに行われるようになってきているのだ。

しかもこのサービスの凄いところは、顧客の利便性の向上だけに留まらないところである。衣類の価値がわかるということは、クローゼットに眠る衣類がそのまま資産となるということだ。

日本ではこれまで金融という観点からは不動産や自動車、宝飾品程度しか資産にできなかったが、これからは衣服や家具、家電、雑貨類もあらゆるものが資産となる。これは金融機関の担保設定や融資審査に大きな影響を与えることになるし、メルカリ自身が金融業に活路を見出す契機ともなっている。

 

メーカーに与える大きな影響

アメリカには企業の在庫の価値を算定し、相応の価値で売却できる「リクイデーション」(Liquidation、在庫・動産の処分)と呼ばれるビジネスがある。

日本では売れ残ってしまった在庫は二束三文で買いたたかれるのが常だが、「リクイデーター」(Liquidator、広義の資産流動化企業)のおかげで、アメリカでは「処分価格」という資産評価方法が生み出され、在庫に相応のバリューを設定できるのである。

つまりメルカリがこのサービスを発展させていけば、企業、個人を問わずファイナンスの世界でイニシアチブを発揮できるようになるのだ。

メルカリは昨年の11月に、新たな金融事業を行う子会社の「メルペイ」を設立。フィンテック界隈でその名を知らない者はいない元グリー取締役の青柳直樹氏が代表に就任した。早晩、金融界で無視できない存在となるだろう。

しかし、ここでより重要なことはメルカリがリセールバリューを提示することで価格決定権をメーカーが失ってしまう可能性があるということだ。

例えばあるメーカーが新作のコートを3万円で売り出したとする。ところがメルカリによってリセールバリューが5000円と出てしまうと、メーカーが希望する価格とリセールバリューとの乖離が大きすぎて、メーカーは値引きを余儀なくされてしまうだろう。

メルカリの拡大は、USED市場の拡大が新品市場を浸食するという話に留まらず、USED市場が新品の価格をも定義してしまうことにつながるのだ。

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