政治政策

米国TPP復帰意向に喜び踊る、安倍官邸の「幸運度」

今井秘書官もゴキゲンらしい
歳川 隆雄 プロフィール

背景には中国の「報復関税」が

兆候はあった。1月の世界経済フォーラム(ダボス会議)でTPP復帰を検討する方針を表明していたし、そもそもライトハイザーUSTR代表とウィルバー・ロス商務長官はTPPに前向きであった。

さらに冒頭のネブラスカ州などの農業州は将来、米国のTPP離脱によって農産品輸出で深刻な打撃を受ける。それは、11月の中間選挙を控えて得策ではない。

 

と同時に、今や米中貿易戦争の様相を帯びてきた現状からすれば、中国の習近平政権がトランプ政権の鉄鋼・アルミニウム製品の輸入関税や知的財産権を巡る米通商法301条の制裁措置に対し大豆など米農産品への報復関税発動を表明したこともあり、ここは農業界にTPP復帰の姿勢を見せる必要があったのだ。

その一方で、トランプ大統領は同窓の大手資産運用会社ブラックストーン・グループのスティーブン・シュワルツマン最高経営責任者(CEO)を介して中国指導部と接触、米中全面衝突回避を模索しているのも事実である。「利の人」トランプ氏は狡猾だ。

[写真]2010年11月、妻ロレインのジュエリーブランド発表会に現れたスティーブン・シュワルツマン氏(Photo by GettyImages)2010年11月、妻ロレインのジュエリーブランド発表会に現れたスティーブン・シュワルツマン氏(Photo by GettyImages)

「悪夢のシナリオ」が一気に逆転

大統領のTPP復帰交渉指示の話がなければ、日米首脳会談でトランプ氏が「ドル安容認」を安倍氏に求めるような場面があって、その内容を会談後の記者会見で披歴でもされたら、それこそ対ドル円レートは瞬時に100円突破の円高になっていたに違いない。日本にとってまさに「悪夢」である。

それにしても、確かに安倍首相はツイている。安倍氏は日米首脳会談でトランプ氏に対して、

(1)トランプ氏がそもそも志向する二国間(バイ)協議である日米FTA交渉と究極の多国間(マルチ)協議のTPPを同時並行に進めよう、

(2)そしてトランプ氏がいま頭を痛める北米自由協定(NAFTA)交渉の暗礁乗り上げについて当該国のカナダとメキシコもTPP締結国メンバーであり、

(3)さらに中国が虎視眈々と狙っている東アジア地域包括的経済連携(RCEP。ASEN10ヵ国と日中印豪韓&ニュージーランド6ヵ国が加盟)での主導権獲得に対抗するためには日米連携がベストである

と、18日午前にゴルフをしながらでも説得できるのだ。

安倍首相は背中に「ツキ」を担いで訪米する。しかし、27日の南北首脳会談と5月末から6月初旬にかけての米朝首脳会談を前に北朝鮮問題を巡るトランプ大統領とのタフな交渉も控えている。成果は如何に。

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