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医療・健康・食 ライフ

もう騙されない!医者が教える「トンデモ健康情報」の見抜き方 

注意すべき「因果関係」の罠
明快な実験結果や、それをまとめたわかりやすいグラフ。そんな「エビデンス(科学的根拠)」らしきものが示された健康情報を見ると、つい信じてしまいたくなるのが人情。しかし、そこには大きな落とし穴があることも……。
実はこんなに間違っていた!日本人の健康法』『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』の著者であり、「世界一受けたい授業」(日本テレビ系列)にも登場した医学博士・奥田昌子さんが、一見正しそうな「トンデモ健康情報」を見抜く方法について説明します。

「タバコをやめると肺がんになる」は本当か?

ちまたにあふれる様々な健康情報や医学情報。その中には、「一見もっともらしく思えても、実はトンデモ」というものも少なくありません。

代表的なものに「喫煙をやめると、肺がんが増える」という主張があります。受動喫煙防止をめぐる議論がようやく深まり始めてきた中での、驚くべき主張です。

実際に、「喫煙率が下がっているのに、肺がんによる死亡率が上がっている」ことを示すデータが存在します。

グラフにある「年齢調整死亡率」は、高齢化の影響を除外した死亡率という意味です。あとで説明するように、がんによる死亡率は高齢化の影響を受けるため、年齢調整をしないと正確なデータにならないからです。

このグラフを見ると、喫煙率は1965年ごろをピークに減少傾向にありますが、一方で肺がんによる死亡率は、ほぼ右肩上がりで上昇しています。これはどういうことでしょう? ひょっとしたら、タバコをやめてはいけないのでしょうか?

当然ながら大間違いですね。

がんは長い年月をかけて発生し、進行するので、タバコが肺がんの原因になるといっても、吸い始めてから実際にがんを発症するまで20年から30年かかります。

そのため、禁煙する人が増えても、それ以前にタバコを吸っていた人が遅れて肺がんを発症することから、肺がんになる人が実際に減り始めるのは30年くらい先になるのです。

 

これは「タバコ病の流行モデル」と呼ばれる理論で、多くの国で喫煙率のピークの30年後に、肺がんによる死亡率がピークをむかえたことを根拠にしています。

喫煙が肺がんの原因であることを裏づける研究は山のようにあります。なかでも信頼できるのがコホート研究です。「コホート」はもともと古代ローマの歩兵の一団を指す言葉で、そこから「集団」という意味を持つようになりました。

コホート研究は、その名が示すように、人の集団を対象に、健康状態や生活習慣を記録しながら、そのなかのどういう人に病気が発生するか何年にもわたって調べるものです。

集団全体を、タバコを吸うグループと吸わないグループに分けて比較すれば、肺がんによる死亡率がどう違うか分析できます。

最終的な結論を得るまでに大変な手間と長い年月がかかりますが、原因と結果を正確に突き止めるには欠かせない研究の一つです。