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不正・事件・犯罪 ライフ

麻原彰晃の魂は「転生」して生き残るのか

「神秘」が再び蔓延する社会で

再び露出する「ヨガ」「瞑想」

俳優でお笑いタレントだった片岡鶴太郎氏は、現在では、画家としての方が有名になり、書家としても活動している。その片岡氏の最近の話題として、ヨガに深入りし、それが離婚の原因になったということが報道された。

ヨガには1日4時間をかけ、食事は朝食だけ。その朝食にも2時間を費やす。そんなストイックな生活によって、65キログラムあった体重は43キログラムにまで減っている。ヨガによって変容した肉体も公開しているが、あばら骨も見え、いかに節制をしているかが分かる。

この報道に接して、私が思い出したのは、1987年に、オウム真理教の教祖、麻原彰晃がはじめてテレビ出演したのが、片岡氏の番組だったことである。

オウム真理教のことが広く知られるようになるのは、89年に週刊誌が報道したことによってだから、それを2年も遡ることになる。番組で麻原はヨガの行者として紹介されていた。

その時点で、オウム真理教はまだ犯罪を犯してはいない。

教団の道場で、修行中に暴れ出した信者に水をかけるなどして死にいたらしめるのは1988年のことで、そのことを知り、教団を脱会しようとした信者を殺害したのは89年のことである。坂本堤弁護士一家の殺害も、同じ89年のことだった。

麻原との出会いが、片岡氏にヨガへの関心を生んだ、というわけではない。その頃、台詞覚えの悪かった片岡氏は、先輩の俳優である秋野太作氏にそのことを相談したところ、ヨガを勧められ、それがきっかけになっていたという。秋野氏の方は、その後、1991年に『私、瞑想者です』(太田出版)という本も出版している。

 

スピリチュアルに染まりやすい世

オウム真理教による地下鉄サリン事件が起こったことで、一時、宗教への反発が強まり、ヨガに対して警戒する人たちも増えた。

だが、それから23年が経ち、オウム真理教とその事件のことが忘れられるようになったなかで、宗教やヨガへの関心が復活し、それと関連するスピリチュアルな現象や運動にも注目が集まっている。

片岡氏は、2016年1月、自らのラジオ番組で、ヨガの実践者である相川圭子氏とも対談を行っている。相川氏は、密閉され、十分な空気のない地下の部屋のなかで、食物や水なしで3日間瞑想を続ける「サマディ」という修行を果たしたとされるが、現在それに成功したのは彼女を含め世界で2人だけだという。

ここで思い出されるのが、オウム真理教でも、同様の試みが行われていたことである。地下鉄サリン事件が起こった直後なら、相川氏のサマディは、オウム真理教を連想させ、警戒の目が寄せられたであろう。しかし、今やスピリチュアルなものをめぐる状勢は大きく変わった。

最近その存在が政治問題化している首相夫人、安倍昭恵氏の場合にも、スピリチュアルな事柄への関心は深い。

彼女は、怪しげな波動理論の共鳴者であるばかりか、大麻解禁を訴えてもいる。それも、スピリチュアリズムと密接に関連し、昭恵氏は、「大麻はただの植物ではなくて、たぶんすごく高いエネルギーを持っていると私は思うんです」と発言したりしている。

時代は確実に戻りつつある。地下鉄サリン事件が起こる前の段階では、インドの宗教家サイババや、個々人の未来、とくに死亡する時が記されているとされる「アガスティアの葉」なるものが、日本でもかなりのブームになった。

経済発展が行き着くところまで行ってしまった、豊かで、その一方で退屈な社会においては、違った世界を見せてくれそうなスピリチュアリズムがどうしても関心を集めてしまうのである。

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