読書人の雑誌「本」 科学

見て、触れて、なりきって!「図鑑の世界」の中に入って遊ぼう

『MOVE生き物になれる展』開催中

シリーズ累計270万部を突破し、子供たちから大人気のシリーズ「講談社の動く図鑑 MOVE」。4月21日より大阪のひらかたパークで「MOVE 生きものになれる展」が開催されている。(東京開催は終了しました)このたび、「MOVE」の企画立案から携わってきたMOVE編集チームの森定泉に、人気の図鑑の誕生秘話を聞きました。

面白い図鑑を作りたい

―「MOVE」はどのような経緯で創刊されたのですか?

企画が動き始めたのは2009年です。講談社の図鑑は1994年を最後に、久しく出ていなかったんですよ。それで、前々から図鑑をやりたいと思っていたこともあって、周囲の方々の協力を得ながらプロジェクトを始動させました。

当初から、どういう図鑑にするのかのイメージははっきりありました。「子供が自発的に面白がって、色々なことに興味を持つきっかけとなるような図鑑」を作りたかったんです。

それまで世に出ていた図鑑は、多くが「調べるための図鑑」でした。たとえば、小学館から出ている図鑑は「調べ学習に最適」というコピーがつけられていました。確かに、学習の資料としては小学館の図鑑はとても優れています。

でも、それだと一部の自然科学への関心の高い子を除いて、多くの子は学校の課題などで調べる時だけ使って、あとは棚に飾っておくだけになってしまう。なぜかと言うと、子供にとって、勉強にはなっても面白いものではないからです。

けれども、もし図鑑の中に、思わず目を引くようなインパクトのある写真が使われていたら、子供たちは興味を持つかもしれない。「よくわからないけど面白そう!」と思ってくれるかもしれない。イメージで言うと、雑誌の『ニュートン』みたいな写真の使い方ですね。そういう観点から、新しい図鑑が作れそうだなと思っていました。

MOVEのなかで人気の図鑑のひとつ『危険生物』。ド迫力の戦いのシーンだ

―図鑑にDVDをつけたのはどうしてですか?

当初はDVDをつけることは考えていませんでした。将来的にWEBで動画を見られるようにするなどは考えていましたが、それも段階的にやっていくことかな、と。ところが、創刊準備を進めている頃に海外研修でヨーロッパに行ってみたら、ヨーロッパではすでに図鑑とWEBの連携が進んでいたんです。「段階的になんて言ってる場合じゃない、すぐやろう」と思いました。

でも、よく考えてみたら、そもそも子供はWEBサイトを見られません。インターネットに自由にアクセスできませんから。その時は、まだ大人目線で図鑑を考えていたんですね。そこで、DVDをつけることを決めました。

「子供のための図鑑」という原点に立ち返ると、今のようにDVDの形にしたのがベストだったと思います。もちろん、これからタブレットが普及して子供がタブレットを使うようになると、また図鑑に求められるものも変わっていくかもしれません。

DVDをつけたことで、想定していたよりも読者の年齢層が下がったのは嬉しい誤算でした。3~4歳くらいだと、まだ図鑑を読むのは難しいかもしれないけど、DVDの映像は楽しめる。楽しみながら観られるから、どんどん興味が広がっていく。

たとえば、『昆虫』のDVDの中に「スズメバチ vs.カマキリ」という映像があります。観ていてとても面白いんです。そして、面白いと思ったら、友達と一緒に観たくなりますよね。そこまでもっていきたかった。そして、実際、「毎日観ています」というハガキが大量に届きました。

 

―創刊してからの反応はいかがでしたか?

2011年の創刊時から反響はありました。ラインナップが揃ってきた頃に図鑑の売り場で展開したところ、「MOVE」がほぼ一人勝ち状態になりました。特に大きな宣伝は打っていなかったので、ほぼ口コミで広がっていたようです。

でも、図鑑同士を見比べたら「MOVE」を買いたくなる気持ちがわかると思いますよ。どちらが面白そうかと言われれば一目瞭然だからです。

今までの図鑑は、親に買ってもらって、棚にしまって、宿題の時に「図鑑で調べなさい」と親から言われて読む、という感じだったのだと思います。

「MOVE」の場合は、子供たちが自発的に読んでくれる。そうすると、親も買い与えたくなる。だから「MOVE」はリピート率がとても高いんです。

―人気のあるテーマは何ですか?

一番部数が出ているのは『恐竜』ですね。あと『危険生物』や『宇宙』も人気です。

他社の図鑑は、お母さんが選ぶから、表紙もコアラだったり優しい感じのものが多い(笑)。でも、「MOVE」はバトル系の表紙にしている。それは、親じゃなくて子供目線を重視して、とにかく子供に面白いと思ってもらいたいからです。

お母さんが多少引くくらいの方が、子供は面白がってくれるんです。

「エデュテインメント」がコンセプト

たとえば、『宇宙』の中で「ジャイアント・インパクト」を紹介している箇所があります。月がどのように誕生したのかを説明する学説ですが、惑星同士が衝突する写真を普通の図鑑の10倍くらいの大きさで載せているんです。そうすると、「一体何が起きたんだろう?」と思って子供たちも読むんですよ。

「ブラックホール」とかも、イラストによるインパクト重視で説明されている。映像もありますし、「MOVE」の『宇宙』を読めば宇宙のことはあっという間に覚えてしまう。絵と一緒に覚えてしまいますから、大人になっても忘れないと思います。

『動く図鑑MOVE 宇宙』より

―4月21日から大阪で再び開催される「MOVE 生きものになれる展」は、どのようなコンセプトで展開されたのですか?

「エデュテインメント」という言葉を使っています。「エデュケーション(学び)」と「エンターテインメント(遊び)」を融合した造語です。動く図鑑の世界を再現して、子供たちに体を使って楽しみながら、色々と学んでもらえたらと思っています。

企画展示の中では、ペンギンになって腹ばいで氷の上を滑るコーナーや、バシリスクというトカゲになって水の上を走るコーナーなどが人気です。子供たちは何時間でも楽しんでいますよ。

あと、スカンクの臭いを嗅ぐコーナーもあります。普通は臭いをかなり薄めて出すのですが、今回はそれなりの濃度で臭いを出しているので、なかなか本格的に臭いです(笑)。

今の子供たちも、昔と変わらずに同じようなことに興味を持っているんです。ゲームばっかりやっている子も、キャンプに行ったら外で走り回るじゃないですか。子供が面白がるツボって、今も昔もそんなに変わっていない。

でも、今はその面白がるツボを親がシャットダウンしてしまっている。危ないとか、気持ち悪いとか言って。だから、子供たちには一切フィルターをかけずに、色々なことに興味を持って欲しいと思っています。

大人も楽しめますよ。水の上も走れます。ただ、100kgまでという体重制限はありますが(笑)。

―体験型の展示はこれまでもあったと思うのですが、「MOVE」企画展はどのような点で他の展示と違うのですか?

一番違うのは、本当にアナログで体を使うことですね。走るとか、滑るとか、隠れるとか、具体的に体を使うものばかりで、デジタル的な体験ではない。学習要素もあって、体も使って、というイベントはこれまでにあまりなかったのではないでしょうか。

最近はVRが流行っていますが、VRって大人だけが楽しいんですよ。子供は経験が少ないから、VRを見ても比較するものがなくて大人ほどは楽しさがわからない。それにVRは誰が見ても同じ映像が見える。

今回の企画展では、子供たちの想像力によって世界の見え方に違いが出てくる。みんなが同じ体験をしているように見えるけど、見えている世界は一人一人違うんです。たとえば「ゴッコ遊び」は各自が世界を作って楽しんでいますが、それに近い感覚だと思います。

―これから先の「MOVE」の展開は?

今年の目玉は「はじめてのずかん」です。2~3歳向けの「MOVE」です。「MOVE」の内容は2~3歳の子供にはちょっと難しいのですが、そのくらいの子供でも楽しめる図鑑作りを実験的に始めてみました。

今までの図鑑と違うのは、お母さんと子供が対話しながら楽しめる、インタラクティブなものになっている点です。テーマは「身近な生きもの」。

たとえば、「MOVE」の『昆虫』にダンゴムシが出てきても、扱える紙面はどうしても小さくなる。「はじめてのずかん」では、ダンゴムシをはじめ、町・山・動物園とか、子供たちの目に真っ先に入って親に聞きたくなるようなものを取り扱っています。

3月に発売されましたので、是非お買い求めください。「面白がることが興味につながる」という「MOVE」のコンセプトを、2~3歳の子たちにも伝えていければと思っています。

「MOVE」としては、「猛毒の生きもの」「水の中の生きもの」などを年内に刊行予定です。企画展示やグッズ展開、スピンオフにも力を入れて、これからもさらに「MOVE」の魅力を子供たちに伝えていけたらと思っています。

読書人の雑誌「本」2018年4月号より

2018年4月21日(金)~2018年8月26日まで 大阪のひらかたパークにて開催!