〔PHOTO〕iStock
社会保障・雇用・労働 メディア・マスコミ 格差・貧困 学校・教育

ひとり親家庭が入学シーズンに直面する、ある死活問題

過去には母子家庭の無理心中未遂も…
アルマーニの小学生制服や高級ブランドのランドセルなどが一時期話題になった。本来、喜ばしい入学シーズンだが、経済的な困難を抱えている世帯にとっては多額の出費を迫られる時期でもある。NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長・赤石千衣子氏が、ひとり親家庭が直面する問題を考える。

新年度となり、全国各地で入学式シーズンを迎えた。桜は散っているところが多かったが、明るい陽射しのもと、親子が街を歩いている姿が目立った。

子どもたちの成長を感じ、これからの未来への期待に胸がふくらむ時期だ。同時に親はこれから教育費がかかると覚悟を決めたりする時期でもあるだろう。

だが、すべての親子がそういう気分でいられるわけではない。

経済的な困難を抱えている世帯は、ランドセルもお下がりを使うと決めたり、食費を削って入学準備をしている。特にひとり親世帯は入学時期に多額の出費を前にため息をついていることが多い。

 

中学で10万円、高校で20万円の準備

小学校に子どもを入学させるときにはランドセルを用意する親がほとんどだろう。

平均価格は3万円~5万円だと言われている。低価格のものは1万円台からあるにはある一方、子どもが少ない分高価なランドセルもつくられており、10万円を超える商品もあるという。

そのほかにお下がりを利用する子も多いが入学式に着る服、体操着、筆箱、ピアニカ、お道具箱、算数セット、上履きなど数万円はかかる。子どもの学習机などは、まだ早いと言って買わない選択もありうる。

中学では制服代(冬服、替え、夏服、白シャツ)と鞄、文具、体操着や部活用品などがかかる。最低でも8万円~10万円は必要だと言われている。

高校の場合、これに有償となる教科書代の購入費用もかかる上、学校が徒歩や自転車で通えなければ通学定期代などがかかり、お弁当を持たせることになる。保護者は15万円~20万円が必要と言われる。さらにほぼすべての子どもを対象とした児童手当は義務教育までで終了となる。

こうした費用を捻出するには、預貯金を用意しておけばいいのだが、ひとり親家庭の場合は預貯金が少なく、50万円以下という母子世帯は約40%であり(平成28年度全国ひとり親世帯等調査による)、ゼロどころか、キャッシングで自転車操業、あるいは借金がすでにある世帯も少なくない。

こうした世帯が入学時の準備をすることが、どんなに困難か想像できるだろうか。

わたしが理事長をするNPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむでは、2016年から入学お祝い金事業を提供している。そのきっかけのひとつが、2014年千葉県銚子市で起きた、県営住宅家賃滞納による強制退去の日に母子家庭の母が中学生の娘を殺害(無理心中を企図と思われる)した事件だった。

この家庭は、娘の中学入学時に費用がかかるため、社会福祉協議会からの小口資金借り入れでは間に合わず、闇金融からお金を借り、その督促に追われたことから家賃を滞納したと裁判で明らかになった。

子どもが小学生のときにはなんとか家計をやりくりできていたのが中学入学時の負担で家計が破たんしてしまったのだ。また夫の借金を肩代わりしており、サラ金に借金があった。

裁判を傍聴したわたしは、なぜ、相談をしてくれなかったのだろう、と本当に悔しかった。

そして、こんな事件を起こさないために、最低限支援団体としてできることを考え、入学時のわずか3万円ではあるがお祝い金をお送りする事業を始めたのだった。

新メディア「現代新書」OPEN!